9/17〜9/23のサンフレッチェ日記



<00.9.23> 日本サッカー協会は昨日アジアユースに向けて中東遠征(9/29〜10/10にかけて行われ、UAEやイランのU-19代表と3試合対戦)を行うU-19代表を発表し、サンフレッチェからは森崎和、森崎浩の兄弟と駒野の3人が選出されました。なお、選出されたのは次の23人。
【GK】
藤ヶ谷陽介(札幌)、黒河貴矢(清水)、岩丸史也(神戸)
【DF】
池田昇平(清水)、茂庭照幸(湘南)、那須大亮(駒澤大)、羽田憲司(鹿島)、中澤聡太(市船橋)
【MF】
森崎和幸、森崎浩司、駒野友一(広島)、石川直宏(横浜)、根本裕一、野沢拓也(鹿島)、
阿部勇樹(市原)、山瀬功治(札幌)、大久保嘉人(国見)、青木剛(前橋育英)
【FW】
清野智秋、前田遼一(磐田)、飯尾一慶(V川崎)、佐藤寿人(市原)、田原豊(鹿児島実)
今回はJリーグもナビスコ杯も関係無く、中国・韓国遠征に参加していない羽田、飯尾等も選ばれ現状ではベストと思われるメンバーではないでしょうか。松下は今回は選ばれませんでしたが、遠征の結果次第ではまだ入る可能性もありますし、チーム練習で頑張っていつ呼ばれてもいいように準備して欲しい、と思います。
<00.9.23> 今週のサッカーマガジンのコラム(賀川浩さんだったっけ)で、五輪の「予選リーグ」の呼び名について議論しています。要するに趣旨は「予選はシドニーに行く前に終わっているのだから、『本番』で予選呼ばわりするのはやめよう」と言うものだったと思います。これは、確かにFIFA主催の世界大会では正しい意見で、例えばW杯は各大陸連盟の代表を決める段階で「予選」は終わっていて、本大会で4チームずつに分かれて戦うリーグ戦は「グループリーグ」と呼ぶのが正しい言い方です。しかし、だからと言って五輪もそうすべきかというと、必ずしもそうではないと思います。
FIFA主催のサッカーの世界大会は、最高位のW杯から若い年代の大会まで、基本的には「地域予選+本大会」と言う形式を取ります。(ただし「コンフェデレーションカップ」とか「世界クラブ選手権」などの歴史の浅い大会は除く。)各国・各地域のサッカー協会にとっては、その大陸の予選に参加することが「大会へ参加する」と言うことであって、32カ国が1つの国に集まって戦ういわゆる「ワールドカップ」は200カ国が参加する巨大な大会の「決勝大会」と言う位置づけになります。ですから地域の大会を「予選」(Preliminary Round)と呼ぶのであって、決勝大会の中の最初のリーグ戦は予選ではなく「グループリーグ」とか「一次リーグ」と呼ぶのです。
これに対してオリンピックは、これとはかなり性格が違います。予選を勝ち抜いた精鋭が集う「ワールドカップ」とは違い、国を代表する選手ならば誰でも(と言うと、ちょっと語弊があるのですが)出ることができる大会なのです。「参加することに意義がある」と言う言葉に代表されるように、参加する、しないは競技力には直接関係なく、基本的には誰でも出ることができるのが五輪の理念です。競泳や陸上競技等で世界レベルには全く達していない選手が出ることがあるのは、まさにこの理念があるからです。にも関わらず各地域・各競技団体ごとに「予選」を行うのは、単に規模の無制限な拡大を防ぐための方便でしか無いのです。
従って、五輪はあくまで開催地に行って初めて「参加した」と言えるわけ。そして現地で初めて「予選」を行い、「決勝トーナメント」(競技によって形式はいろいろですが)を戦ってメダル獲得チームを決めるのです。サッカーの場合でも、現地からの映像にはしっかりと「Preliminary Round」と出ているところを見ると、「予選リーグ」と言う言い方は別に日本のマスコミの無知のせいではなく、五輪の正式な言い方であることが見て取れる、と思うのです。
ただ、オリンピックはIOC(国際オリンピック委員会)が開く大会だからと言って、各競技の競技団体の意向やスタイルを無視できるわけはありません。ですからサッカーは実質的な「U-23世界選手権」として「地域予選」から始まって各大陸の代表を決め、そして五輪本番ではW杯などFIFA主催の大会さながらの運営を行っています。(なんと選手入場の時にはFIFAのフェアプレー旗が先導し、"FIFA Anthem"まで流される!)また会場もシドニーだけで行われるわけでもありません。ですから、私自身としては「まあ、どっちでもいいじゃない」と言うのが正直なところなのですが、しかし出場している代表選手までが「予選リーグ」と言っている訳ですから、別にそれでいいんじゃないの?と思うのです。
<00.9.22> シドニー五輪の予選リーグを勝ち抜いたのは、欧州が2(イタリア、スペイン)、南米が2(ブラジル、チリ)、アフリカが2(ナイジェリア、カメルーン)、そしてアジアと北中米が1ずつ(日本とアメリカ)となりました。これを、W杯のグループリーグ突破国(フランス大会で欧州10、南米4、アフリカ1、北中米1、アジア0)と比較すると、欧州が少なくアフリカとアジアが躍進しているように見えます。しかしこれは以前から言われていたように欧州各国が五輪に力を入れていない事と、そしてそもそも欧州からの出場国が少ない事から来るもの。五輪に限ってアトランタと比較すると、予選リーグ突破は欧州3(スペイン、フランス、ポルトガル)、南米2(ブラジル、アルゼンチン)、アフリカ2(ナイジェリア、ガーナ)、北中米1(メキシコ)だったので、今回も勢力分布にはほとんど違いは無い、と言う結果だったとも言えます。
ただその予選リーグの内容を詳しく見ると、今回はアジアが良く健闘した、とも言えます。アトランタ五輪に出場したアジアのチームは、日本が2勝1敗、韓国が1勝1分1敗、サウジアラビアが3敗だったのに対して、今回は日本と韓国が2勝1敗、クウェートが1勝2敗。1チーム当たりの平均勝ち点を3.3から5.0へと大きく増やしています。この平均勝ち点5.0は南米の6.0に次ぐもので、欧州と北中米の4.5、アフリカの3.25よりも多いのです。(因みに、アトランタの平均は欧州=4.4、南米=5.5、アフリカ=3.7、北中米=4.5、オセアニア=3。)内容的にもアジア各国は他の国と対等に戦ったゲームが多く、アジアは前回までの「健闘するが結果を出せない」地域から「対等に戦ってある程度結果を残す」地域に成長しつつあるような手応えを感じます。アトランタの日本に続いて今回も韓国が2勝1敗ながら予選突破できないなど、勝ち抜くしぶとさという意味ではまだ弱いものがありますが、しかしそう言うものは順番を追って行けば良いのだ、と思います。ここ10年ほどはアフリカの目覚ましい伸びが目立っていましたが、これからは「アジアの時代」になるかもしれない。そのためには、シドニーで唯一決勝トーナメントに残った日本が更に勝ち進み、アジアを引っ張る立場になる事が重要なのではないでしょうか。そして、更に重要なのはこの結果をフル代表に繋げることだ、と思います。なんせアトランタではナイジェリアが優勝しながら、フランスW杯ではアフリカ勢は期待を大きく裏切ってしまったわけですから。
<00.9.21> 「腐っても鯛」ではありませんが、やはりブラジルはブラジルでした。個人の能力が高いのはもちろんですが、序盤に日本がペースをつかむ前に全力を上げて点を取りに来たこと、その後ペースダウンしてしっかりと守ってきたこと、そして終盤疲れがたまった時でも集中力を切らさなかったこと。大事な試合をどう戦うべきか、勝ち点が必要なときにどのように取るのかということが身体に染みついているとしか言いようのない戦いだったと思います。「世界チャンピオン」であるブラジルはこの世代ではないはずなのですが、しかしこれが国としての経験、伝統の力というものなのだ、と思い知らされた感じがします。
それに対する日本五輪代表ですが、やはり序盤は「名前負け」があったように思います。ブラジルがいきなりエンジン全開で速い攻撃を仕掛けてきたのに対して、ずるずると下がって守勢に立ってしまいました。失点のシーンも2列目からの飛び出しに対応できず、DFラインに入っていた選手もポジショニングが悪くスペースを作ってしまったためのもの。このまま行けば1点では済まないかもしれない、と言う立ち上がりでした。少なくとも数年前までの日本なら、このまま崩れていったかも知れません。しかし、その後続いた猛攻を凌ぐと後は互角。ブラジルの高い位置からの守備と足元のテクニックの高さはやりにくそうでしたが、それでも自分達のサッカーを思い出したように徐々に落ち着いたプレーができるようになっていました。また心配されたフラットスリーディフェンスも、両サイドのスペースをツートップに狙われながらも粘り強く対処。オフサイドトラップも良く機能し、それ以上の失点を許しませんでした。攻撃面はやはり中田英の不在が響いたのか流れからの決定的チャンスは少なかったのですが、その分中村のFKを生かしてセットプレーから何度か好機を作り、ブラジルのゴールを脅かしました。4年前のマイアミ、ブラジル戦の勝利は衝撃的なものでした。が、その「守って守って、守り抜く」と言う戦術で得た勝利は、結局日本の身になるものではありませんでした。しかし昨日の敗戦は言わば「良い敗戦」。意味的には、アトランタの勝利よりも遥かに重要だと言えるように思います。この五輪代表選手達の戦う姿勢をサッカーの神様が評価して、そして南アフリカを負けさせ、決勝トーナメント進出という「ご褒美」をくれた、と言えるかも知れません。ブラジルに敗れはしましたが、しかし選手達は「戦える」と言う手ごたえと自信はつかんだはず。ブラジル以上に恐れるべきチームはもうないはずです。「これでメダルが見えた」等と騒ぐのは好きではないのですが、しかしこのチームには十分にその資格があることを、選手もサポーターも感じることができたのではないかと思います。
これで、2日後に行われる準々決勝はアメリカとの対戦となりました。私はアメリカのゲームはクウェート戦しか見ていないのですが、4-4-2のシステムで基本に忠実に攻め、守り、走り回る姿はまるでバクスター監督のチームみたいだな、と思いました。これまで3戦無敗でグループ1位で勝ち抜いた力は決して侮ることはできませんが、しかしその組織力、個人の力のいずれででも日本が分が悪いという事は無いはずです。今となってみると中田英と森岡を休ませることができたのも幸運だった、と言えるかも。(そう考えると、トルシエという人は本当に幸運を持っている!)この試合に勝てば、次はスペインとイタリアの勝者と、そしてその後は決勝か3位決定戦を戦うことができるわけですし、ブラジルとの再戦だって有り得ます。ここで何とか勝って、次につなげてほしいものです。
<00.9.20> 昨日トルシエ監督の記者会見の記事を見たのですが、全体的によく落ち着いているな、と言う印象を受けました。相手がブラジルであるからと言って決して恐れることなく、自分達のしてきたことを信じて戦う。中田英がいなくても、森岡がいなくても戦えるだけの準備をしてきたのだから、その通りの力を発揮すればよい。これらのトルシエの言葉は、この内容をきっと目にするであろう日本五輪代表の選手達へのメッセージでもあるように思いました。これまでトルシエ監督の記者会見というと、攻撃的な姿勢や特異な言動を見せるなど、時には彼の人間性をも疑わせるものでした。しかし4月の「解任報道」以来の騒ぎを結果を出すことによってねじ伏せ、再契約を勝ち取り、そして因縁の南アフリカに勝つことによって過去を精算することができて、トルシエ監督自身がかなり精神的に安定した状態にあるのでしょう。この、監督の変化が選手達にどのような影響を与えるか、と言うと間違いなく良い影響だと思います。かつてドーハでW杯出場権獲得寸前まで行った時には、興奮する選手達以上にオフト監督が冷静さを失っていたと聞きます。前回の五輪では西野監督と選手達との溝が深まり、かなり険悪な雰囲気だったと言う話も聞きます。その姿は今やブラジル五輪代表の姿であり、逆に日本五輪代表は(あくまで想像ですが)監督から選手、そしてサポートスタッフまでがしっかりと意思統一された「戦う集団」となっているように思います。トルシエ監督が会見で言った「準々決勝で中途半端な試合をしてアメリカに負けるより、私の哲学にある素晴らしい試合をして負ける方がいい」と言うセリフは、決して強がりや負けたときのための言い訳ではないと思います。ここで引き分け以上の結果を出せば、もうブラジルと戦わなくても金メダルを取れる(^_^;)と言う気持ちで、戦ってほしいと思います。
<00.9.20> 開催国として躍進が期待されたオーストラリアは、フォックスがいるということもあって注目していたチームの一つでした。しかし、初戦のイタリア戦に接戦の末敗れると抑えが効かずにズルズルと後退し、結局3戦全敗。期待のエース・キーウェルがいないなど最初からマイナス要因はありましたが、それにしてもその脆さ、勝負弱さは目を覆うばかりのものでした。もともと、サンフでもその精神的な弱さゆえにポジションを失ったフォックスがディフェンスの要にいる、と言う事自体が不安定さを予想されるものでしたが、しかしそれはフォックスだけではありませんでした。キーポイントとなった第2戦は、ナイジェリアのテクニックに翻弄されて頭に血が昇って大荒れ。本来精神的に落ち着かせることが役割のはずのオーバーエイジのエマートンが一発退場してしまったところに、このチームの弱さが象徴されるように思います。私はこれを見て、こう言う「熱さ」はトムソン監督やポポヴィッチとも通じるところがあるな、やはりオーストラリア人の特質なのかな、とも思ったのですが、しかしバルセロナ五輪ではトムソン監督が率いる代表がベスト4まで進出している事を考えると、必ずしもそうとも言えないのではないか、とも思います。
先日のトムソン監督のインタビューによると、バルセロナの頃のオーストラリア五輪代表は国内のセミプロ選手ばかりだったそうです。トムソンはその選手を育て、団結させ、五輪で良い結果を出した。そしてそのおかげもあって、その後オーストラリアの選手達はヨーロッパのクラブに買われて行き、キーウェル、ヴィドゥカ、ヴィドマー、ボスニッチなどビッグクラブの中心を担う程にまで成長しました。そしてその結果代表が更に強くなったか、と言うとこれが全く逆の結果に終わったのは、まさにその「選手が外国に買われた」ことに原因があるような気がしてなりません。
サッカーはもちろんチームスポーツであって、良い選手を11人揃えたからと言って勝てるチームになるとは限らない。特に精神的に未熟な若い選手ばかりを集めたチームは、精神的に強固な繋がりができないと強いチームはできないのかも知れません。日本五輪代表がブラジル戦に勝てるかどうか、メダルに届くかどうかは分かりませんが、しかしこの大会後に外国のクラブに移籍する選手は多いでしょう。しかし、それが必ずしも代表の強化につながるものではないことを、この結果が暗示しているのかも知れません。
<00.9.20> 日曜日に行われたサンフレッチェユースとガンバユースの対戦は、0-4で敗れました。
<00.9.19> ここまで全チームが2試合を終えたシドニー五輪ですが、大会前の予想とは違う結果となってきているように思います。A組では活躍が期待された開催国オーストラリアが早くも予選敗退を決める一方でホンジュラスがなかなか良いサッカーで善戦。B組は最強だと予想されていたチェコが勝ち点1しか奪えずカメルーン、クウェートが1、2位を占めていて、アメリカもしぶとさを見せています。スペインの独走かと思われていたC組はチリが一歩リード。モロッコが連敗ですが、しかしまだ微かに可能性を残しています。そして、最大の「誤算」(日本にとって)はD組のブラジルの敗戦ではなかったでしょうか?誰もがブラジルが2連勝することを想定し、日本が2勝すれば決勝トーナメント進出が決まって楽な気持ちでブラジル戦を迎えることができる、と信じていたはず。アトランタ五輪では初戦のブラジルに全てを賭けて戦って、そして燃え尽きてしまいましたが、この五輪は逆に南アフリカ、スロバキアに勝ちさえすれば大丈夫、と言う雰囲気でした。ところがブラジルの意外な敗戦で、日本は次のゲームで引き分け以上でないと自力での突破が不可能になるという展開。強いチームが勝つとは限らないのがサッカー、先が読めないのがサッカーですから、こうなってしまうのも別におかしな事ではないのですが、それにしても2大会連続で「2勝1敗でも予選リーグ敗退」の可能性もあるとあっては、「ブラジルの敗戦にはむかつく」とトルシエ監督と同様の気持ちの人も多いのではないか、と思います。
では、本来勝ち点3差で圧倒的にリードしているはずの日本の勝算はどうなのか。本当に南アフリカが勝ち、日本が負けてしまう可能性が高いのか。あのブラジルが2連敗するはずがない、ブラジルに勝った南アフリカがスロバキアに負けるはずがない、と私も思わないでもないのですが、しかしものごとはそう単純ではないとも思うのです。
まずは有利が予想される南アフリカですが、確かにブラジルを破って勢いはあると思います。しかし、「同タイプ」のブラジルに通用した攻めが全く違うタイプのスロバキアに通じるとは限らない。特に、イングランドでヨーロッパ選手相手の経験を積んでいるはずの、最も頼りになるはずのフォーチュンが出場停止です。むしろスロバキアには日本以上にてこずる可能性もあるのではないでしょうか?逆にスロバキアですが、確かに2連敗でモティベーションの低下が心配されます。しかし最終戦に勝って、なおかつブラジルが敗れれば勝ち点3で3チームが並んで予選リーグを突破できる可能性もあるわけで、むしろそのわずかな可能性に賭けて必死で来る、と考えた方が良いでしょう。この状況は、勝ち点こそ違いますがアトランタでの日本のハンガリー戦前の状況と良く似ている、とも言えるのです。将来のフル代表入りやビッグクラブへの移籍の可能性も考えると、ここで手を抜くわけには行かないスロバキアの選手達の奮闘に期待したいところです。
そして、日本の相手であるブラジル。確かにブラジルはブラジルなのですが、しかしテレビで見ている限りではやはり「セレソン」ではなくU-23代表だな、と言う気がします。一人一人の選手は確かに巧いのですが、しかしリバウドやロナウドのような驚異的な突破力と決定力を持つ選手も、ロベルト・カルロスのような人並み外れたボールを蹴るような選手もいません。また、ドゥンガのように1人でチームを鼓舞するリーダーも不在です。更に2試合とも早い段階で失点していることからも分かるように、守備の組織力も今一つです。つまりこのブラジルは「世界の最強国」と言うよりも、普通の強いチーム、と言うように見えるのです。ここに日本が全ての力を持って当たれば互角に戦えるし、別に「奇跡」がなくても十分に勝機があるように思います。その上、ブラジルの問題は監督です。「インテリ監督」としてフランスW杯後の2年間、ブラジル代表を率いているルシェンブルゴ監督ですが、このところの南米予選の不振や自身の不正疑惑で今やクビ寸前の状態。ほとんど唯一の頼みの綱が、ここまで無敗を誇ってきたU-23代表だったと聞きます。そう言う状況で敢えてオーバーエイジの選手を加えずに五輪本番に臨んだのは、ここで力で他国を圧倒して「金メダル」と言う結果を残すことが、世論を黙らせる唯一の道だったからなのです。しかし、その思惑に反してスロバキア戦の不安定な戦い方と南アフリカ戦の敗戦で、予選リーグ突破も風前の灯。ここで「これではいけない」とチームが更に団結して来るという可能性はもちろん高いのですが、逆に「やはりルシェンブルゴではだめだ」と選手の心がバラバラになってしまう可能性も同じぐらいの確率であるように思います。ブラジルの監督にとっては、この2日間は本当に針の蓆の上にいるような、緊張と焦燥の日々ではないでしょうか?そしてその「心理的マネージメント」の結果がプラスと出るかマイナスと出るかで、日本戦の出来が決まるのではないでしょうか?
最後は日本五輪代表です。2勝すれば予選リーグ突破だ、と思ってたのにそうならず、また攻撃の中心の中田英、守備の中心の森岡が出場停止と苦しい状況には違いないでしょう。このチームをどのようにブラジルと戦えるように持って行くか、選手起用と心理的マネージメントが難しい、と言う意味ではトルシエ監督も同様の困難の中にいます。しかし、常勝が期待されながら結果を出せないルシェンブルゴと、ユース代表から手塩にかけて選手を育ててきたトルシエとは立場が違うし、選手との関係も違う。むしろ2試合で決勝トーナメント進出という結果を出して気が抜けてしまうよりも、前の2試合の緊張と良い雰囲気を保ったままで「最強の敵」に相まみえる事ができるのは、かえって良いことかも知れません。五輪でのメダルを騒いでいるのはマスコミだけで、日本のサッカーにとって本当に大事なのは2002年です。ここでで金メダルを取ったって2002年に惨敗しては何の意味もないのです。むしろここで、予選リーグの突破のためにはブラジルに負けてはいけない、と言う状況設定は、2002年にも当然有り得るシナリオとして最高のシミュレーションである、と言えるように思います。選手達には、決して過緊張に陥ることなく、全力を尽くしてほしいし、むしろこの状況を楽しんでほしいと思います。そして我々も結果がどう転ぼうとも、このビリビリする戦いを楽しみたいと思います。
<00.9.18> シドニー五輪の予選リーグ(これまではFIFAの用語に従って「グループリーグ」と書いていましたが、今後は五輪用語に従うことにします)第2戦のスロバキア戦は、中田英と稲本のゴールで2-1で勝ちました。
日本の先発は、
        楢崎

   中澤   森岡  中田浩

三浦    明神  稲本    中村

       中田英

    柳沢      高原
と、初戦とは右サイドを入れ替えた布陣。これは、南アフリカ戦でサイド攻撃があまり機能しなかった事を考慮しての事だったと思われます。これに対してスロバキアは序盤こそ引いて出て来ないでカウンターとセットプレーに賭ける、と言う感じでしたが、徐々にペースアップ。ヨーロッパの選手らしい確実な技術で前に出てきます。日本も初戦の緊張が解けたのか小気味の良いパス回しからチャンスを作りますが、決定的な場面でのシュートミスやGKの好セーブによりゴールを割ることができません。お互いに持ち味を出した好ゲームで前半をスコアレスのまま折り返し、後半勝負となりました。
このところ後半になっての選手交代でリズムを変えて勝利に導くことの多いトルシエ采配ですが、この日もやはり後半9分に動きます。南アフリカ戦にも増してぴりっとしない柳沢に代えて酒井を入れ、中田英を1.5列目に、中村をトップ下に上げて三浦を左サイドに回します。両チームに疲れが出る後半、と言うこともあったのかも知れませんが、しかしこれで中盤の支配力が上がり、サイド攻撃も機能するようになります。そしてそれがついに実ったのが後半の22分でした。三浦が左サイドを縦に突破して敵陣深く入り込むと、左足で鋭いクロス。高原が斜めにクロスするようにニアに入り込んでDFとGKの注意を引きつけると、ファーサイドに入った中田英と中村が完全にフリーになり、これを中田英がヘッドでゴールネットに突き刺して先制点を上げました。更にその7分後、今度は相手セットプレーのピンチからボールを奪って中田英が狭いスペースからスルーパス。高原がこれを受けて独走し、GKの股抜きを狙うシュートを放ちます。そしてGKの後に転がったボールに飛び込んだのが稲本。この日、南アフリカ戦以上に何度も前線に顔を出していたこのスーパーボランチが決めたシュートは、この試合の流れを決定付けるものとなりました。結局その後1点を失ったもののそれ以上の得点を許さず、2勝目を上げてD組トップに立ちました。この組の実力トップと見られるブラジルが南アフリカに敗れたため予選リーグ突破を決めることはできなかったのが残念ですが、しかしこのブラジルは決して勝てない相手ではない。解説の金田さんも言っていましたが、五輪のブラジルは「セレソン」ではなくあくまでU-23代表です。恐れることなく、焦ることなく戦えば、きっと結果も出るはずです。キープレーヤーの中田英と森岡が出れないのは確かに痛いのですが、しかしトルシエ監督は特定の選手に頼るチーム作りはしていないはず。ここまで見せてくれている団結力とファイティングスピリットを更に高めて、実力で決勝トーナメント進出を勝ち取ってほしいものです。
<00.9.17> 昨日の中国新聞夕刊に、セルマーニ氏の記事が出ていました。セルマーニ氏とは、トムソン監督の1、2年目にサンフレッチェのヘッドコーチだった人で、昨年よりオーストラリアに帰国してセミプロチームの「キャンベラ・コスモス」の監督を務めています。そして現在、その監督業の傍らシドニー五輪の競技担当部長を行っているそうで、日本五輪代表がゲームをしているキャンベラのブルーススタジアムで、ボールボーイなどの会場の補助役員のすべてを取りしきる役目をしているのだそうです。南アフリカ戦の14日は早朝からコスモスの練習を終えてからスタジアム入りをしたとのこと。このスタジアムは芝の張替がうまく行くかどうかなどいろいろと心配されていましたが、その裏にはセルマーニ氏の奮闘などがあったわけです。
昨日から本格的に始まった五輪の競技では、日本人選手が次々とメダルを獲得するなど素晴らしい出足を見せていますが、おそらくこれにはサッカーが南アフリカ戦で逆転勝利した事も良い影響を与えているのではないでしょうか。この流れを、スロバキア戦の勝利に繋げてほしいと思います。
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