9/30〜10/6のSANFRECCE Diary


<01.10.6> 前節の福岡戦は、間違いなく今季最高の内容でした。サッカーダイジェストでは久保の8を最高に高い採点が並んで「週間ベストイレブン」にも4人(だったっけ?)が名を連ねました。またOptaポイントも1試合で12000ポイントあまりも積み上げ、なんとシーズン通算で一気にリーグトップに立ちました。そしてそれだけでなく、将来スーパースターになる(ヴァレリー監督の予言)であろう森崎浩司選手が初ゴールを決めた試合として、長く記憶に残るゲームになるだろうと思います。しかし、残念だったのはそれがアウェイだったと言う事、そしてテレビ中継がスカパーしか無かったこと。「ダイジェスト番組でゴールシーンを見ただけだった」「どういうゲームだったかぜひ詳しく知りたい」と言う人は多かったのではないでしょうか。
 この多くのファンの望みに、「紫熊倶楽部」の中野編集長が応えてくれています。有料メールマガジン「広島フットボール」で今週の水、木に配信されたマッチレポートが、紫熊倶楽部・広島フットボールホームページで特別に公開されています。2つ合わせて実に18,000字にも及ぶ渾身のレポートは、まさに広島フットボールならではのもの。ファン、サポーターにとっては必見と言って良いのではないでしょうか。そして私自身、特に嬉しかったのは最後に書かれていた森崎和幸選手の言葉です。「サポーターの応援がすごく嬉しかった。F東京戦でああいう負け方をして、もう見捨てられたかも知れないと思った。でも、横浜M戦で、あれだけの人が応援してくれたじゃないですか。そして、博多の森でもたくさんの人が来てくれた。本当に嬉しかった。頑張らなきゃ、と思いました。サポーターのおかげですよ、本当に」。
<01.10.5> 昨夜フランスのランスで行われた日本代表とセネガル代表の親善試合は、身体能力に勝るセネガルに圧倒され0-2で完敗を喫しました。
 中田英、名波などキープレーヤーを怪我で欠く日本は、GK:都築、DF:中田浩、森岡、松田、MF:奥、戸田、稲本、波戸、藤本、FW:高原、鈴木というメンバー。両サイドからの突破と、藤本が動いてボールを拾って裏に飛び出すことでチャンスを作ろう、と言う意図だったと思われます。しかしそれがうまく行きかけたのは立ち上がりだけ。セネガルの身体能力と意外にも?高い組織力に押し込まれ、何度もピンチを招きます。相手は主に3人のコンビネーションで攻めてくるのに対して日本は3バックだけでは対応できず戸田や波戸、奥までが下がって守ると言う感じ。攻撃は前線にボールが入ってもサポートが入らず、キープもままならない状況で機能せずに終わります。結局、前半は日本のシュートが0だったのに対してセネガルは14本。よくぞ0-0で済んだと言うほどのものでした。
 後半になるとトルシエ監督は、中田浩、藤本、高原を下げて服部、伊東、柳沢を入れます。いわゆる「トップ下」を無くして中盤の高い位置に左に稲本、右に伊東を配する布陣でしたが、これがある程度機能します。柳沢の動きが良かったこと、稲本がパスの出し手になった事で前半よりははるかに高い位置でプレーする事が出来るようになりましたが、しかしそれも「焼け石に水」と言う感じ。その後、後半30分ぐらいに稲本に代えて福西、奥に代えて廣山を入れるなどテスト的な色彩を強めたこともあって、最終的には2点を取られて敗れました。今回のセネガル代表はW杯予選に出場した選手ばかりではなく「1.5軍」と言う感じだったそうですが、やはりW杯に出てくるチームは強い!と言う事を実感させられました。コンフェデレーションズ杯で準優勝と言う結果を残した日本代表ですが、本大会まではまだまだレベルアップが必要だ、と言えそうです。
 ところで代表初先発だった藤本ですが、出来は決して悪くなかったと思います。低い位置から前線までボールの出所に頻繁に顔を出し、DFラインの裏を狙おうという姿勢も見せるなど精一杯のプレーだったと思います。また守備面での貢献も目立ち、強烈なスライディングタックルで2度ほどボールを奪うところも見せました。得意のドリブルが通用しなかったのは残念でしたが、前線にボールが収まらずパスも出てこない状況であれ以上の事をやれ、と言うのはなかなか難しかったのではないでしょうか。前半のみの出場で交代することになったのは、主に戦術的な理由だったと考えたいと思います。このゲームで攻撃的MFに必要だったのは、中盤でしっかりとボールをキープしてロングパスを逆サイドに振るとか、あるいはFWをラインの裏に走らせるようなプレーだったのでは無いか。言ってみれば中田英のようなプレーで、そう言う意味では藤本には少々荷が重かったと言えるかも知れません。でも逆にここで見せたようなプレーの精度を高めて周囲とのコンビネーションを上げていけば、藤本が代表で生き延びていくことは可能でしょう。少なくとも「森島」になるポテンシャルを秘めていることは、示すことが出来たと思います。次のナイジェリア戦で出番があるかどうかは分かりませんが、ここで多くを学んで一段とレベルアップして帰ってきて欲しい、と思います。
<01.10.4> 福岡で素晴らしいサッカーを見せてくれたサンフレッチェですが、次の問題はこれを続けるかどうかである、と言うのはおそらく衆目の一致するところだと思います。これまでもサンフは、流れをつかみかけては逃してしまう、と言う事を繰り返しています。身近な例では先日の浦和戦です。2nd stageの立ち上がりに2連勝。好調の市原を完ぺきに近い内容で下して首位に立ち、これからというところで逆転負けを喫しています。その他にも例えば昨年の2nd stage、4勝1分2敗の5位で迎えた京都戦に完敗して以降急降下していますし、一昨年の1st stageは神戸に2-5と惨敗して連勝を止められています。これまでのサンフというと、とかく期待させておいては裏切ることの繰り返し。せっかく良いサッカーを見せてもそれが長続きせず、最終的には中位の程々の位置に収まってしまうのです。長年サンフを見続けているファン、サポーターにとっては、1試合や2試合良いゲームを見せられても信用できないよ、と言うのが本音なのではないでしょうか。昨日は「これで安心」みたいなことを書きましたが、それはあくまで一時的なもの。広島が本当に強いチームになるための戦いは、ここから始まるのだと言っても過言ではない、と思います。
 ただ、そうは言っても今のサンフにはこれまでにない手応えはある、と私は思います。昨日取り上げた湯浅健二氏の「サッカー監督と言う仕事」に、こう言う下りがあります。
 「ヴァイスヴァイラー監督は...多くの新風(選手)をチームに吹き込み続ける事でも有名だった。...彼には明確な目的があった。チーム内での緊張関係を維持し続けるという目的が。」
 ヴァイスヴァイラー監督は、当時の1FCケルンで「王様」だったオベラートの「緊張感がなく、わがまま放題」だったところを矯正するために若い才能(ヘルベルト・ノイマン)を加えます。そして彼がミスをしても使い続け、時にはオベラートを外すことによって刺激を与え続けます。そしてそれによってオベラートを活性化させ、更にノイマンを後継者として育ててしまったのだそうです。「競争(ライバル関係)が無いところに進歩は無い」と、湯浅氏は続けます。「競争が存在しないチームは必ず衰退する。」これまでのサンフは、まさにここに問題があったのだろう、と思います。「紫熊倶楽部」の最新号で藤本選手が語っているような「ポジションを奪われそうで怖いな、と思う若手はいません」と言う状況が、このチームが更に大きく成長していくのを妨げていたのではないでしょうか。
 翻って、今のサンフはどうか。これまでとはやや違うのは、横浜戦と福岡戦に主力の上村、駒野を欠いた状態で戦った、と言うことです。そこで代わりに出た選手がきっちりと役目を果たした、と言うことです。昨日はその事実をあまりポジティブには書きませんでしたが、しかしこれは実は非常に重要なことなのです。そして更にこの2試合では、途中出場の選手が見事な活躍を見せています。横浜戦で決定的な3点目を決め、福岡戦でも労を惜しまず相手DFにプレッシャーをかけ続けたスカチェンコ。出ていきなりゴールを決め、スーパーなFKをも見せてくれた森崎浩。彼らの存在、彼らの活躍は、きっと他のFWや中盤の選手に対しても大きな刺激になったに違いありません。
 これまでのヴァレリー監督は(だけでなくトムソン監督も)、限られた駒をなんとかやりくりして戦うしかありませんでした。若手を抜擢すると言っても、それは選手がいないから。彼らがそのままレギュラーを取ってしまうことはめったに無く(駒野と一時期のトゥーリオぐらい?)、逆にポポヴィッチの退団や上村の怪我で大穴が開いたポジションを埋めるのに必死だったのでは無いでしょうか。しかし、今はやや状況が違います。レギュラー選手が皆、調子を維持している中で、サブの選手が虎視眈眈とポジションを狙っています。スカチェンコは実績を考えれば本当は自分の方が上なのだ、と思っているに違いないし、森崎浩は今度は先発で出たい、と考えているでしょう。そしてこう言うチーム内の競争があることは、本来当然のことなのです。それがあまり無かったからこそ、ここぞと言うところで気が抜けてしまっていたのではないでしょうか。
 そう言う意味では、次節の監督の采配に注目です。欧州遠征から戻った藤本や上村のコンディションが悪ければ、森崎浩や八田を使ってもいいはずです。久保を控えに回してスカチェンコを起用する、と言う決断があったって不思議ではありません。監督がどのようにこのチームをマネージメントしていくのか。その如何によって、これまで通り中位に沈むか、あるいは上位進出できるかが決まるのではないでしょうか。
<01.10.3> 3連敗の「地獄」から蘇ったサンフレッチェは、福岡戦では素晴らしいサッカーを披露して勝ってくれました。私はテレビで見ただけなのですが、まるで良い時の磐田を見るような、美しいサッカーがそこにありました。これはいったい、それまでとは何が違うのか。東京戦以前と横浜戦以降では何が変わったのかを、ちょっと考えてみました。
 まず、選手起用が変わったのかどうなのか。東京戦までと横浜戦以降とでは、少なくとも先発メンバーについては上村や駒野がいたかいないかだけの違いです。代わりに入った八田や奥野が非常に良いプレーをしたのは事実ですが、しかし彼らが決定的な仕事をしたかというとそうでも無いでしょう。上村、駒野が入ればベストメンバーになることは、今でも変わらないはずです。また戦術面ですが、横浜戦の59分以降と福岡戦では、奥野が最終ラインに入ってそれまでの4バックから3バックになった点が違うように見えます。しかし、これが沢田がセンターに入った時と大きく違うのかというと、そうでもないように思います。変わったように見えるのは、沢田と奥野の能力と個性が違うから。スピードのある沢田はやや上がり目に位置しているのに対して、ラインコントロールの巧みな奥野はやや後ろ気味のポジションを取っている。相手のボールホルダーがDFラインに入り込んでくる状況で真っ先に行くのが沢田で、オレグや上村を行かせるのが奥野。違いと言えばそれだけなのではないかと思います。だいたい終盤になって奥野や桑原を投入して守備を固める、と言う起用はこれまでも何度もやっているわけで、監督が特に変わった采配をしたわけではないように思います。
 では、なぜ東京戦までの3試合では機能していなかったのか。そしてそれ以降には上手く行くようになったのか。思い返してみると、東京戦では選手の動きが決定的に少なかったように思います。特にマイボールになった時、周りの選手がマークを外してボールを受ける位置に動く、と言う動きが少な過ぎたように思います。また守備の場面でも、ボールホルダーだけに行ってしまって他の選手を見ていなかった(いわゆる「ボールウォッチャーになる」と言うやつですね)場面が多かったと思います。これは監督の采配の問題というよりも、選手の意識の問題ではなかったのか、と今になって思います。
 チームがちゃんと機能しているときはいいのです。自分が動けば他の選手も動く。それによって自由にボールを回すことができて、自分達の思うようなサッカーができるときはいいのです。しかし、例えば久保や大木など中心となる選手の調子が落ちたらどうなるか。その時に「それじゃ自分で打開してやろう」と思える選手はほんの一部で、ほとんどの選手は「組織に逃げ込む」事になるのではないでしょうか。自分の言われたことだけをする。例えばFWだったら前に張りついているとか、MFだったらボールを追い回すふりをするとか、DFだったら裏を取られないようにだけ気をつけるとか。そう言う選手の「サラリーマン化」が蔓延していた事が、東京戦の敗戦に繋がったのではないでしょうか。その点での意識改革があったからこそ、横浜と福岡に勝つ事ができたのではないか、と思います。
 評論家の湯浅健二氏の著書「サッカー監督という仕事」によると、名監督の誉れ高いドイツの故ヴァイスヴァイラー氏はこう語っていたそうです。
 「トレーニング方法、システム、戦術などの知識やアイディアをひけらかしたり自慢するコーチは多いが、そんなやつらはほとんどが2流だ。コーチの本質的な仕事は...チーム本来の目的を達成することに向けて、選手達が全力を尽くして取り組むようにマネージすることだし、実戦ではチーム共通の目的を達成するために、全力で戦おうとする『姿勢』を育成することなんだ」
 実を言うとFC東京とのゲームを観戦した後、私はいささか絶望的な気分になっていました。3試合も続けて同じ失敗をして、それを修正できない監督は結局のところ選手の意識をマネージできない監督なのではないか、と。でも、ヴァレリー監督は違いました。広島フットボールによると、東京戦と横浜戦の間の練習中に怒りを爆発させた事があったそうです。それも選手全体に向かって怒りを見せただけでなく、スカチェンコに対しては個人的に厳しい叱責を与えたそうです。いったいどんな内容で怒ったのか、それは想像するしか無いのですが、たぶん選手の心のダークサイドを刺激するような(これは湯浅さんが好んで使う言葉です)、そんな「指導」をしたのではないでしょうか。それによって選手達が「やらされるサッカー」から「自分本位のサッカー」に意識をシフトさせたことが、チームの劇的な転換のきっかけを作ったのではないでしょうか。
 選手一人一人の技術だけではなく、二人目、三人目の連動(「イメージシンクロ」と言っても良い)した動きができること。それが良いサッカーをするためのキーであることは私のような素人でも知っていることです。しかし、相手のあるサッカーでそれを完璧にやり遂げることは非常に難しいことです。そしてそれを11人にさせることができるかどうか。それが「良い監督」の条件であると言っても、決して間違いではないと思います。(もちろん、監督のやるべきことはそれだけではないのですが。)そう言う意味では、ヴァレリー監督はやるべきことを完璧に成し遂げたのだ、と思います。危機的状況にあるチームを、救うことができたのだと思います。このチームが今後どのように成長していくのか。どうやって今後の壁を乗り越えていくのか。非常に楽しみな事になって来たと言って良いのではないでしょうか。
<01.10.2> 日曜日に福岡との間で行われたサテライトのトレーニングマッチは、2-1(前半1-1)で広島が勝ちました。得点者は高橋と梅田。メンバーは、GK:林、DF:梅田、トゥーリオ、八田、駒野(→寺内45分)、MF:李(→西嶋65分)、松下、山形、FW:宮崎、中山(→吉田45分)、高橋。勝ちはしたものの内容的には今一つで、雨が強かったこともあってミスの目立つゲームだったとのことです。
<01.10.2> Jユース杯の第3戦、セレッソ大阪とのゲームは、サンフレッチェユースが2-0(前半0-0)で勝ちました。広島の得点者は大野と木村。メンバーは、GK:古川、DF:守生、寄井、川端、MF:宮本、沖本、田坂、対馬(吉村)、FW:木村(田森)、馬屋原、大野(西山)。スタッツを見るとシュート数、ゴールキックなど互角なので、割合競ったゲームだったのかも知れません。怪我で戦列を離れていた田森が復帰したのが収穫かも。
<01.10.1> 広島ホームテレビの「サンフレッチェBOX」が、この9月末で終了してしまいました。地元放送局によるサンフレッチェ情報番組はごく最近までテレビ新広島の「JリーグOLE」とこの「サンフレッチェBOX」の2つがあって、短時間ながら確実にサンフレッチェの情報が得られる番組として貴重な存在でした。ところが春の番組改編で「JリーグOLE」が終わってしまい(正確には「サタ・スポ情報局」に統合された、と言ったほうが良いかも知れませんが)、更にこの「サンフレッチェBOX」が終了してしまったことは、非常に残念な事だと言わざるを得ません。
Jリーグ開幕時には山ほど?あったサッカー番組も次々と姿を消し、地上波のレギュラー番組はTBS系の「スーパーサッカー」のみ。Jリーグ各クラブの応援番組はどこも縮小傾向にあるので必ずしもサンフレッチェだけの問題、というわけではありません。これはたぶん、単に人気がなくなったからと言うよりも、BSやCSがあればほとんどの中継を見ることが出きるようになった、と言うテレビの環境の変化の方が大きいかもしれません。しかしこの「サンフレッチェBOX」は株主の一つ(の関連会社)である広島マツダが提供し、サンフレッチェを愛するスタッフが一生懸命作っている、と言う雰囲気が良く分かる番組だっただけにこの終了は残念でなりません。唯一の望みは、9/29放送の最終回の最後のテロップで「しばらく休止します」と将来の再開に向けての含みを持たせる終わり方だったこと。これはおそらく、終わらせたくないと言う番組制作スタッフの「再開のためには視聴者のサポートを」と言うメッセージだ、と私は理解しました。終わって残念だという気持ち、また再開して欲しいと言う気持ちがありましたら、ぜひ広島ホームテレビに投書、電話(tel.082-221-7133, fax.082-223-2761)、あるいはメールでその気持ちを伝えて下さい。私もメールします。
<01.9.30> 昨日行われた2nd stage第7節アビスパ福岡との対戦は、広島が終始ゲームを支配して圧倒。4-0で快勝し、福岡戦の連敗を3で止めました。
駒野を出場停止で欠くサンフは、登録上は4-3-3でしたが実質的には奥野をリベロに置いた3バックで次のような布陣でした。
       下田

   オレグ 奥野 上村
沢田            服部
       森崎和
   
       コリカ(→桑原70分)
 藤本(→森崎浩62分)  
            大木(→スカチェンコ62分)
      久保

SUB:加藤、高橋
ゲームは序盤から広島ペース。開始1分にはいきなり久保がペナルティエリア内で絶妙なトラップから左足でゴールに叩き込みましたが、判定は惜しくもオフサイド。しかしその後もサンフは、奥野が最終ラインを高く保って中盤を狭め、藤本、大木、久保が交互に下がってスペースを埋めてゲームを支配します。足の具合に不安があった服部も復調してきたのか積極的に上がってボールを呼び込み、藤本、大木などが次々とシュートを放ちます。しかし福岡守備陣の身体を張った守備とGK塚本のファインセーブでなかなかゴールが奪えません。逆に福岡は盧が右サイドを突破してチャンスメイク。前半30分ごろにはビアージョ、バデアが立て続けに広島ゴールを脅かしますが、しかしこれを下田が素早い反応でセーブします。そして広島ペースで迎えた前半43分、待望の先制点が入ります。ボールをつないで左サイド深くに侵入した藤本のクロスは、いったんは相手DFに当たって流れます。しかしここに走り込んだ服部が、ダイレクトで鋭いクロスをゴール前へ。飛び込んできた大木が打点の高いヘッドで叩き込み、ようやく流れを呼び込みました。
この流れを完全につかんだのが、後半開始早々の2分。左サイドに開いたコリカからのパスを中央の久保がDFラインの裏に出そうとします。このボールは相手DFに当たりますが、しかし逆に絶妙のループパスになってラインの裏に落ちます。GKと1対1になった藤本は、倒れ込みながらアウトにかけてシュート。相手の裏をかくボールは、ゴールネットに沈みました。
最近の「勝利の方程式」となる2点のリードを奪ったサンフは、その後は落ち着いてゲームを支配し、福岡に付け入る隙を与えません。後半17分には森崎浩をスカチェンコとともに投入しましたが、この森崎浩がファーストプレーで魅せます。後半18分、左サイドでボールを持った久保が丁寧なパスをグラウンダーで送ります。ここに後ろから走り込んだ森崎浩は、ワンタッチでDFラインの裏に抜け出すと左足を振り抜きます。このシュートは鋭い軌跡を描いて福岡ゴールへ。能力の高さを評価されながら、そしてサテライトなどでは結果を出していながらなかなかチャンスを与えられなかったこのU-20代表選手が、ついにそのベールを脱いだ瞬間でした。その後はまるでなぶるようにゲームを進めるサンフ。森崎兄弟とコリカが作る中盤は高いキープ力と正確なパスで福岡を翻弄。さすがの体力と運動量の豊富さを誇る福岡も、追うことすらできなくなってしまいます。久保、スカチェンコが前線を動き回って相手DFを混乱に陥れ、服部と沢田が何度もオーバーラップをかけて攻めに攻めます。4点目のきっかけは久保の突破からで、右サイドからペナルティエリアに侵入しようとした久保を、福岡の選手が思わず倒してしまいます。ゴール正面やや右寄りはレフティにとっては絶好の位置。通常なら服部が蹴るところですが、キッカーを譲られたのは「福岡の守備が崩れていたのでハットトリックを狙っていた」と言う森崎浩でした。左足を横殴りに叩きつけるようにして蹴ったボールは壁の隙間を抜けて鋭く曲がり落ちるようにゴールを襲い、ポストに薄く当たってゴール。「どんな世界的なGKでも取れない」(スカパーで解説の富樫洋一氏)スーパーショットは、森崎浩の能力の高さを見せつけるものだった、と言えるのではないでしょうか。これまでため込んでいた力を一気に解き放ったような、そんな素晴らしいゴールでした。
横浜戦に続いて「降格争い」のチームに圧勝したサンフはこれで通算勝ち点を25とし、年間総合順位も11位に上げました。先日も書いたように残留の一応の目安は勝ち点28なので、8試合を残してあと1つ勝てばよいというかなり楽な立場になりました。しかし、選手達が前から言っているようにこのチームの目標は「J1残留」などというちっぽけなものではありません。この日見せたような主導権を握り続けるサッカーを、どんな状況でも、どのチーム相手にでもすることです。そして「優勝」と言う目標に向かって、チーム一丸となって進んで行けるようなチームになることでしょう。昨日の勝利で2nd stageの勝ち点で名古屋と並び、4位に浮上することができました。首位の鹿島が勝ち続けているためまだ優勝争い、と言うところまではやや遠い気はしますが、しかし上位争いをかき回すぐらいはできるはずです。いつも書いているのですが、これまでのサンフの悪いところは、「良くなってきた」と言うところで波に乗れないところです。これで勝てば上位進出、と言うゲームになると、必ずと言っていいほど集中を欠いて負けてしまうことです。質の高いチーム、本当に強いチームになるためには、これは必ず乗り越えなければならない壁です。これまでは「降格」がちらついてそこから逃れるので必死でしたが、本当の勝負はこれからです。更に高い位置を狙って、更に質の高いサッカーの完成を目指して行ってほしい、と思います。
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