6/2〜6/8のSANFRECCE Diary


<02.6.8> 世界が注目した因縁の対決、イングランド対アルゼンチンは、イングランドが1-0で逃げ切りフランス大会の雪辱を果たしました。ゲーム内容は、と言うとイングランドの作戦勝ちだと言えそうです。ベッカムはほとんど前に上がらずチーム全体の重心を後ろに置き、攻めはオーウェンのスピードに任せると言う感じ。強国が強国相手に守備を固めてカウンター狙いに徹したらこうなる、と言う言わばお手本のような展開で、さすがのアルゼンチンも攻めあぐねてしまっていました。特に終盤の10分間はアルゼンチンが攻めに攻めていたように見えますが、これもイングランドにとってはたぶん予定通り。案の定、あの手この手で攻めたアルゼンチンは、最後までゴールの鍵をこじ開けることはできませんでした。このゲームは「荒れた試合」になるかと心配されましたが、コッリーナ氏の上手なコントロールもあってフェアなプレーに終始。激しくかつフェアなプレーのまま終わったのは良かったと言えるでしょう。フランス大会の時にはイングランドがそのまま姿を消しましたが、今回はまだ後があります。両チームがこのまま勝ち上がれば、準決勝で再び対戦する可能性があります。勝ち点4となってあとは引き分けでもOKのスウェーデンと、グループリーグでの敗退が決まったものの「最終戦も誇りを持って戦う」と宣言したナイジェリアは共にタフな相手ですが、何とか勝ち上がって再び「因縁の対決」を見せて欲しいような気がします。
 前のスペイン対パラグアイのゲームは、パラグアイが先制して面白くなったと思って見ていたものの、終わってみれば3-1でスペインの完勝。スペインは2連勝でグループリーグ突破を決めました。フランス大会のパラグアイはGKチラベルを中心に強烈な守備の堅さを誇ったチームでしたが、それから4年経ってチラベルが衰えるに従ってチームの強さもまた減退してしまった、と言う感じ。せっかく前半は望み通りの展開になったのに、後半になって崩れてしまいました。スペインはラウルを中心とした攻撃陣、バラハ、ルイス・エンリケの中盤、イエロが固める守備と全体的にバランスが良く「優勝候補」の名にふさわしいチームだと思いますが、それにしてもフランス大会のパラグアイを期待していた目にはいささか残念な思いが残りました。
<02.6.7> 昨日のフランス対ウルグアイでのアンリのタックルは、確かに危険なものだったと思います。しかし前半の半ばで別にゲームが荒れていたわけでも無い場面で、退場にするのが正しかったかどうかと言うといささか疑問。(逆にあの判定で荒れてしまった、と言う感あり。)審判の判定の「揺らぎ」もサッカーのうちだとは言え、王者フランスにとっては運に見放されたとしか言えないW杯となってしまいました。しかしこの退場のおかげで両チームの実力がイーブンになった?か、その後は非常に見ごたえのあるゲームになりました。1人少ないとは思えないほどボールを支配するフランス。堅守速攻に磨きをかけ、相手の一瞬の隙を狙うウルグアイ。結果は今大会初のスコアレスドローとなりましたが、面白さ、と言う意味では間違いなく上位にランクされるゲームだったと思います。これでA組はデンマーク、セネガルが勝ち点4でリードし、フランスとウルグアイが勝ち点1で追う展開となりました。フランスとウルグアイはこれで次のゲームに勝たないと勝ち抜きが無くなり、特にフランスは2点差以上をつけないといけなくなりましたが、しかし目標がシンプルになった分逆に戦いやすいかも知れません。出場停止のアンリ、プティの穴が痛いのは確かですが、シセやマケレレなど控え選手も一流です。いずれにしろ次のゲームも間違いなく、死ぬか、生きるかの大事なゲームになります。
 昨日見たのはもう1試合で、カメルーン対サウジアラビア。初戦で0-8と大敗したサウジがどれだけ修正してくるかが一番の注目点でしたが、見た感じではサウジらしい、まずまずのサッカーが出来ていたと思います。ボール支配率はカメルーンの方が上でしたがボールを奪ったらカウンター、と言う戦術が徹底していて、チャンスの数では同等かあるいは上回っていたかも知れません。ただ、惜しかったのはゴール前で必要な冷静さと集中力に不足があったように見えたこと。特にエースのアルテミヤトは度重なるチャンスをことごとく外し、チームを救うことが出来ませんでした。サウジは全ての選手が国内リーグの所属ですが、そこが経験不足として出てしまったのかも知れません。さして出来が良いとも思えなかったカメルーンに勝ち点3を与えてしまったのは、アジアのチームの限界を見たようで残念でした。これでE組はサウジの1次リーグ敗退が決定。ドイツ、カメルーンが勝ち点4でリードし、これを勝ち点2のアイルランドが追う展開となっています。アイルランドは勝ち抜きのためにはサウジに勝つことが絶対条件。ドイツは得失点差で有利なので引き分けでも勝ち抜きが決定するのに対し、カメルーンは引き分けでは敗退の可能性があります。このグループもA組ほどではないにしろ、第3戦には厳しい戦いが待っています。
<02.6.6> 昨日の試合のうち、見ることが出来た2試合についてショートコメント。まずはポルトガル×アメリカですが、まさかアメリカが前半に3点奪うとは... その他にもアメリカには何度か決定的なチャンスがあり、ポルトガルのディフェンスラインのあまりのザルぶりに「これじゃ優勝は無理だ」と頭を抱えました。(個人的にポルトガルに優勝して欲しかったので ^_^;)ただ、その後のポルトガルの攻めは本当に魅惑的。フィーゴ、ルイ・コスタを中心に細かいドリブルとパス回し、長く正確なロングパス等で相手の守備陣を切り裂く攻めは、やはりレベルの高さを見せました。またアメリカの勝利も決してフロックではなく、チーム全員による攻めと守りのバランスが非常に良く、ここでの勝ち点3は正当なものだったと思います。間違いなくポーランドよりも強い事が分かったこの両チーム相手に、韓国代表が勝ち点を積み上げることができるのか。次が正念場だと言えるでしょう。
 ドイツ×アイルランドは、主審がチャンピオンズリーグなどでおなじみのニールセンさんだったと言うこともあって、まるでヨーロッパの試合を観ているような感じでした。ファンタジーとはあまり縁のない両チームながらお互いに特徴を出し合って、試合全体を通しての緊迫感はさすがワールドカップ、と言うもの。世代交代に失敗して「落ち目」だったドイツは徐々に復活してきていることを示し、アイルランドは真面目さ、しぶとさ、そして執念を見せつけました。終了間際の同点ゴールには感動しました(たぶん、出雲の人たちはもっとでしょう!)が、そこまで何度も決定的なチャンスを得てカーンがはね返していた事を考えれば、流れとしては当然だったと言えるかも。これは両チームとも勝ち点1にふさわしいゲームだった、と思います。
<02.6.5> ベルギーはしたたかで、そして強かった。しかし日本はそれをはね返す技術と精神力を持っていた。昨日の日本代表の初戦のベルギー戦は、先制されながらすぐに追いつき、逆転してまた追いつかれると言う展開で2-2の引き分けに終り、貴重な勝ち点1をゲットしました。日本代表のメンバーは、GK:楢崎、DF:松田、森岡(→宮本71分)、中田浩、MF:稲本、戸田、市川、小野(→三都主64分)、中田英、FW:鈴木(→森島68分)、柳沢。日本の基本は、カウンターを警戒してロングボールをDFラインの裏に放り込んでFWを走らせる、と言う戦術。逆にベルギーは主に小野のサイドを攻め、クロスを放り込んでセカンドボールを狙うと言う形でした。前半はどちらかと言うとベルギーのペースで、日本のボールはことごとく経験豊富で屈強なDFラインにはね返されてチャンスを作れず。逆にベルギーは何度か決定的なシュートを放ちます。前半は楢崎を中心とする守備陣の奮闘でこれを何とか抑えますが、しかしついに後半12分、セットプレーからのこぼれ球を放り込まれ、これをヴィルモッツがオーバーヘッドシュートを決めて先制を許しました。
 しかし、日本代表が本当の「強さ」を発揮したのはこれからでした。リードを許して下を向いてしまうのではなく、より強くゴールへの意志を持ってベルギーを押し込みます。同点になったのはわずか2分後で、小野の40mのロングパスと鈴木の身体を投げ出してのシュートと言う2つのスーパープレーが結実してのものでした。その後は完全に日本のペース。ベルギーの選手は序盤から前後に動かされたのが堪えたかパッタリと足が止まり、市川が、森島が、柳沢が何度もDFラインを切り裂きます。稲本の勝ち越しゴールはその流れの中で生まれたもので、稲本のフィジカルの強さと技術の高さの賜物、と言えるものでした。しかし後半30分、またもやセットプレーからのこぼれ球の折り返しに飛び出したバンデルヘイデンに決められて追いつかれます。後半40分には稲本がペナルティエリア内で相手ボールを奪ってゴールネットを揺らましたが、これは何故かファウルを取られてノーゴール。その後両チームとも死力を尽くしてゴールを狙いますが、集中力は最後まで切れずそのまま引き分けとなりました。
 この試合、勝つチャンスを逃したと言う見方は確かにあると思います。特に稲本の「幻のゴール」は不可解な判定に泣かされたと言う感じでしたし、柳沢がペナルティエリア付近で2度にわたって倒されたシーンでファウルを取ってもらえなかったのも残念でした。しかし、例えば後半ロスタイムに楢崎が相手選手を倒したシーンもPK&退場になっても文句の言えないプレーでしたし、戸田や稲本が2枚目のイエローを貰っても不思議ではない場面もありました。従ってあの判定は「時の運」に属するもので、仕方がないと言って良いのではないでしょうか。むしろ(ファンタジーは全く無いが)ベルギーの真面目一辺倒の(そしてそれが何よりも恐ろしい)サッカーに対して勝ち点1を得た、と言う事を喜びたいと思います。何と言っても日本はこれが2回目のW杯出場で、これまで勝ち点0の上に1点しか取れていなかったわけですから。むしろこの試合が勝ちではなくて引き分けだったと言うことで、次の試合に向けて適度な自信と緊張感、そしてモティベーションを持って臨めるはず。私はむしろ、これでベスト16への可能性が高くなった、と言う気がします。
 さて、東アジア勢が出た他の2試合ですが、こちらは対照的な結果となりました。まずは共同開催国の韓国ですが、全ての面でポーランドを上回って2-0での勝利。48年前の初出場から何度も挑戦して果たせなかったW杯での1勝を、ようやくつかみ取ることが出来ました。ポーランドのフィジカルの弱さ、アイディアの無さ、判断の遅さに助けられたと言う感もありましたが、そこできっちりと勝ちをゲット出来たのは、間違いなく良い準備ができていたからでしょう。残りの対戦相手を考えるとこれで安心はできないでしょうが、少なくともアジアの強さを示すことができたのは良かった、と思います。逆に中国は、コスタリカ相手にほとんど何も出来ないままの敗戦。確かに「組織力が上がった」と言う噂通りパスを繋ぐことはできていましたが、そこからペースを変えて相手を崩すアイディアに乏しく得点の予感が全く漂わないサッカーに終始しました。逆にコスタリカは前半は苦労しましたが、1点を取ってからは自由自在にサッカーを楽しんだ、と言う感じ。2-0と言う点差以上の内容差のゲームでした。ただ、これはアジアと北中米のレベルの違いと言うよりも中国とコスタリカの経験値の違いが原因だと思います。中国の今後の相手を考えるとグループリーグ突破は絶望的ですが、何とかブラジル、トルコ相手に一瞬でも煌めきを見せて欲しいと思います。
<02.6.4> 昨日からようやくテレビ観戦モードに入ることが出来て、落ち着いてゲームを見ることが出来ました。(と言っても、仕事の関係でクロアチア×メキシコは見れなかったのですが。)  まずブラジル×トルコですが、これはトルコの健闘が感動的でした。特に目立っていたのはスーパーセーブ連発のGKルスチュですが、その他の選手も全員が労を惜しまない動きで、ブラジルとの技術の差を埋める働きをしていました。先制点はルシオのパスミスをカットしたバスチュルク(因みにこの2人はレバークーゼンのチームメイト)が、上手に身体を入れてボールをキープしながら前を向くと絶妙のループパスを送り、これをファーでハカン・サスが叩き込んだと言うもの。歴史的とも言える得点を奪ったにも関わらず、さも「当然だよ」と言わんばかりのハカン・サスの姿には痺れました。これに対して個人技でゴリゴリと攻めるブラジル。これを高い集中力ではね返すトルコ。しかしさすがに後半は疲れたのか徐々にスペースが空き、リバウド、ロナウド、デニウソンらに自由を与えてしまいます。ロナウドの復活の狼煙となる同点ゴール、そして2点目となったPKは流れから見ると仕方のないものだった、と言えるかも知れません。が、あのPKの判定はどう見てもペナルティエリアの外で、リバウドが倒れたのも明らかな演技。せっかくの好ゲームがブラジルの悪辣な「マリーシア」と韓国人レフリーの誤審に壊された、と言う感じで後味の良くないものに終わってしまったのが残念でした。
 続いてイタリア×エクアドル。カテナチオとカウンターアタックで「ファンタジーよりも勝利」のイタリア。今年は攻撃陣に注目選手が多いと言うことで期待して見ていたのですが、やはりイタリアはイタリアでした。エクアドルは一人ひとりがしっかりとした技術を持っていて決して弱いチームだとは思わなかったのですが、そこにほとんど良さを出させなかったのがイタリアらしいところで、ウルグアイ対デンマークと同様に典型的な「欧州×南米」の戦いだったにも関わらず、全く面白みの無いゲームになってしまいました。蔚山は2試合連続の好ゲーム。札幌は2試合連続のワンサイドゲーム。これは単なる運なのでしょうか?それともサッカー専用スタジアムと野球兼用のドームスタジアムとの差なのでしょうか?
 ところで試合以上に気になるのはチケットの問題です。開幕前は少なくとも日本の開催ゲームは全て売れたと見られていたものが、蓋を開けてみればほとんどのゲームで1万席以上の空席があると言う異常事態となっています。FIFAは急きょネットでの直前販売を開始しましたが、アクセス殺到のため当然のように極端に繋がりにくくなっていたようで、結局昨日も空席の目立つスタジアムとなってしまいました。これはバイロン社とFIFAによる不手際と言う以上に、入場料収入に頼るJAWOC、KAWOCとチケットが欲しくても手に入らないファンに対する重大な背信行為である、と言わざるを得ません。今日の報道によるとJAWOC、KAWOC、FIFA、バイロンは今後の対策について検討中だそうですが、今後この問題が解決したとしても済んでしまった試合の空席のチケットを売るわけには行かないわけですから、現地組織員会は訴訟なり何なり最大限の手段を講じて、FIFAとバイロンに責任を取らせて欲しいものです。また今後の対策についても、今朝のニュースによると電話による予約販売も始めることにしたそうですが、それだって電話の不通や悪名高い「チケットゲッター」の暗躍の可能性など問題点が指摘されています。韓国内では現地での当日券販売をするそうですが、日本国内でも解決方法はそれしかあり得ない、と思います。場所や人手、ダフ屋対策など課題はいろいろあるでしょうが、何とか観戦者本位の方向で解決して欲しい、と思います。
<02.6.3> いよいよ開幕したワールドカップ。この週末、早速韓国・蔚山を訪れてウルグアイ×デンマーク戦を見てきました。朝5時に東広島を出て福岡から水中翼船で釜山入り。そこから1時間以上かけてバスで蔚山に移動し、試合観戦後再び釜山に戻って1泊。翌日は観光する気力も無く?釜山市内で行われたW杯関連のイベントを見ただけで帰国し、自宅に帰り着いたのは午後10時半と言う強行軍で、初めての韓国をじっくり楽しむ余裕はありませんでした。が、W杯の雰囲気を味わうと言う意味では十分なもの。特に蔚山文殊競技場は2階建てのサッカー専用スタジアムで、ゴール裏の一番上のあたりの席だったにも関わらず見やすさには全く問題なく、両チームの緊迫感あふれるサッカーを堪能できました。試合前の両チームサポーターのフレンドリーな雰囲気。ゲーム中の盛り上がり。試合後落胆で肩を落とすウルグアイのサポーター。歓喜に酔いしれるデンマークのサポーター。そして熱戦に満足顔の他国(韓国、日本だけでなく、ブラジルやイングランドの人も来ていた)のサッカーファン。Jリーグはもちろん、ヨーロッパのリーグ戦や通常の代表戦とは全く違った雰囲気で、「W杯は病みつきになる」と言う噂は本当だった、と確認することが出来たように思いました。
 試合内容については、詳しくは他のサイトを参照して(^_^;)頂くことにして、レコバとダリオ・シルバの個人技が頼りのウルグアイと、チーム全体が統一した意識の元に戦い抜いたデンマーク、と言う両国の特徴が最大限に発揮されて非常に面白いゲームでした。特にデンマークの集中力の高さは特筆すべきもの。立ち上がりはダリオ・シルバが頭脳的な動きで何度も前線でボールを持って危険な香りを漂わせていましたが、10分ほどでその動きを「学習」するとほとんど前でボールを触らせなくなって中盤より低い位置に押し込めてしまいます。またレコバに対しても中盤ではボールは持たれる(持たせる?)ものの、シュートとラストパスの余地は与えないと言う守備を貫いていました。そして攻撃に入ると大きな展開と正確なパス、そしてゴール前の強さでウルグアイを恐怖させると言うパターン。「ファンタジー」と言う意味ではウルグアイの個人技の方が上だったかも知れませんが、内容的には「サッカーの組織戦術」と言う教科書(があったとして)をなぞるような戦い方を貫いたデンマークが圧倒した、と言って良いものだったと思います。人的な交流が盛んになった現代では、欧州と南米のサッカーの違いはなくなった、と良く言われますが、このゲームに限ってはまさに欧州流と南米流の激突、と言う感じ。ある意味「古き良き香り」が漂う、W杯らしいゲームを味わうことが出来て満足でした。
 なお、この韓国行きについては「紫熊倶楽部」に写真と文章を投稿しようと思っています。もし運良く採用されましたら、そちらもごらんください。
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