2001年5月5日(土)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜さあ、ここから出発だ

レポート/瀬戸秀紀

 横浜戦の敗戦で、ついに最下位に転落したヴァレリー・サンフレッチェ。Jリーグではまだどこもやったことのない4−3−3での攻撃サッカーで、選手も観客も楽しめるサッカーを、と高い理想を掲げて臨んだ今年のシーズンだったが、待っていたのは苦しい現実だった。第3節の札幌戦から守備重視の3−4−3に変更したものの、薄くなった中盤を運動量でカバーする戦術は前半しか持たず、第4節以降は毎試合2失点以上。攻めきれず、守りきれずで1点差負けばかりの3連敗に、ヴァレリー監督の悩みも頂点に達した感もあった。

 しかし第6節の横浜F・マリノス戦は、内容的には決して悪くはなかった。サイドのFWが交互に下がって守備と攻撃の組み立てに参加し、ボールを奪えば一気にゴールに向かう。2人のボランチは相手の攻撃の起点を潰すだけでなく、前線まで顔を出して攻撃にも参加する。この激しい上下動によって中盤のスペースを消し、マイボールになったらダイレクトパスでサイドから崩す。このヴァレリーサッカーの基本コンセプトが良く機能して、決定機の数は横浜を上回っていたのだ。シュートミスが多かったことと守備でのミスが出たことで敗戦という結果しか残らなかったが、明るい将来が垣間見えたような、そんなゲームだったのである。

 この試合後、ヴァレリー監督は次のように語っている。

 「次の試合ではもっと攻撃的に出る。戦術も変えることになる。中盤をもっと強くしないといけない。」(メールマガジン「広島フットボール」より。)

 悩み、苦しみ、それでも結果が出ないとき、遠回りのように見えて一番の近道なのは基本に帰ること。トップでは3−4−3で戦いながらサテライトでは4−3−3を守って戦ってきたヴァレリー戦術の原点は、失点のリスクを恐れずに攻めきると言う、その姿勢なのだ。そしてそこに戻って再出発することが、「もうこれから下はない」(藤本選手)サンフレッチェにとって最も必要な事だったのだ。

 そういう中で迎えたFC東京戦。久々の4−3−3が機能し、チームとしては5年ぶりのハットトリックも飛び出して3−0での快勝だった。相手の不調に助けられた、と言う面もあったかも知れない。大事なところでのミスもあったし、引きすぎて相手に攻められた時間帯もあった。しかし、どうしてもこのゲームには負けられないと言う選手の気持ちがスタンドまで伝わり、非常に楽しい90分だった。

 もう下は向くまい。自分たちのやって来たことを信じて、明るい未来だけを見つめて行こう。今後も紆余曲折はあるかも知れない。だがここまで苦しんだ経験が、きっと生きてくるはずだ。目先の勝利や、J1に残留することがこのチームの目的ではないのだ。ここからが、本当の出発なのだ。