2001年5月11日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜この高橋泰を、見よ!

レポート/瀬戸秀紀

 日本代表の久保。元U-22日本代表の藤本。この「全国区」の2人と共に3トップの一角を担うのが3年目の高橋泰だ。ここまで8試合すべてに出場して5得点。なぜかサッカーマガジンには無視されているが、アレックス、北島、ウィルと並んで得点ランキングの2位に付けている。これまで一度も「代表」と名の付くものに呼ばれたことのないこの20歳のストライカーが、今サンフレッチェの中で一番輝いている、と言っても良いだろう。

 高橋は帝京高のエースとして高校選手権で準優勝。1年目にJリーグにデビューして、24試合に出場して6得点をあげ優秀新人として表彰もされている。しかし、昨年は「2年目のジンクス」にどっぷりと浸かり、リーグ戦ではついにノーゴールに終わってしまった。サテライト暮らしが続き、たまにチャンスを与えられても生かすことができず、またサテライトへという悪循環。そして今年も久保、藤本に続く第3のFWの座を新人・梅田と争い、磐田戦、札幌戦ではサブスタートだった。その後は先発で使われていたが結果が出せず、横浜戦では何度も決定的な場面を外すなどまたまた壁に当たっているような感もあった。

 しかしFC東京戦ではプロ入り初のハットトリック。続く市原戦では、2点目をループでゲットする余裕も見せた。特にこの市原戦は、1得点1アシストのコリカ以上の活躍だったと言っても過言ではない。押されに押されていたムードを一変させた久保の先制ゴール。これをを生んだのは、高橋の労を惜しまない動きがあったからこそだと言えるだろう。

 守備に入ったときにはボールホルダーに身体を寄せ、マイボールになったらパスコースに顔を出し、ボールをはたいたら次のスペースに動き、そしてチャンスにはゴール前に入り込んで最低でも相手DFを引きつける。この無駄に終わることの多い動きを、高橋が常に基本に忠実にこなしていたことが服部のクロスを呼び、そして久保がフリーでボールを叩き込むことができたのだ。

 ヴァレリー監督がたびたび課題として指摘する、攻守の切り替えの早さ。それをこの連休最後の日のゲームで実現していたのは、むしろ市原の方だった。広島の選手は特に前半、足が重そうで全く動けていなかった。しかしそれでも勝ちを拾うことができたのは、それまで全く沈黙してたかに見えた高橋の、この精力的な動きがあったからだ。まだまだ戦術が浸透したとは言えないヴァレリー・サンフレッチェだが、しかしこの日の高橋のように全員が無駄を厭わず動けるチームになれば、きっと魅惑的なサッカーを見せてくれるに違いない。

 次節の相手は、動きの量と質では高橋以上?の、森島、盧が率いるセレッソ。更にユン・ジョンファンも復帰の予定だ。高橋だけでなく、チーム全員が足を止めずに動かなければ、勝利はないだろう。メンバーは、森保が出場停止となることを考えて次のように予想する。

 GK:下田
 DF:駒野、ポポヴィッチ、上村、服部
 MF:桑原、森崎和、コリカ
 FW:藤本、久保、高橋

期待の選手は、もちろん高橋。プロ入り初ゴールをあげた縁起の良い広島スタジアムで、3試合連続の歓喜を見たい。