2001年5月25日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜アタカバチ!

レポート/瀬戸秀紀

「アタカバチ」(ロシア語で「攻撃」の意味らしい。因みに広島弁の「カバチ」とは全く関係ありません)をモットーとするヴァレリー・ニポムニシ監督は、昨年まで「守備的で面白くない」と揶揄されてきた広島のサッカーを変えつつある。第10節を終わって総得点19はリーグ第3位。特にこのところの4試合はいずれも3得点で、取られても取り返すという派手なゲームで観客を喜ばせている。

 この、ヴァレリー戦術の基本はスリートップ。第2節に磐田に完敗した後も、守備陣の人数を増やしてもこのスリートップだけは崩さなかったから、これはヴァレリー監督のアイデンティティーだ、と言って良いだろう。この布陣により、確かに攻めに転じた時の起点が多くなり、ゴール前に飛び込む人数も増える。が、その分中盤の厚みが減って、特に運動量の落ちる後半以降、攻められっぱなしになってしまうことも多いのだ。5月に入って4連勝と勝てるようになって来たのは良いのだが、しかしここまでかなり幸運に恵まれた面があったのも事実。特にこれから暑くなって運動量的には非常に厳しくなる。そんな中でどのように戦っていくのか、まだまだ課題は多いのである。

 ただ、幸いなのはこの勝利で選手が自信をつけて来ていることだ。試合を通じてゲームを支配することはできず、引いて守って攻め込まれることも多いが、しかし追いつかれても反発し、最後まで勝利を信じて戦うことができるようになった。これは昨年までに比べて大きく成長している点である、と言えるだろう。

 ヴァレリー監督はKリーグ富川SKの監督時代、1−0でリードしているにも関わらず守りに入らず逆転負けしたことがあるそうだ。だがその時不満を表したオーナーに、「観客のために攻め続けるのが私のサッカーだ」と胸を張って見せたという。今のサンフレッチェはまだ守りに入ってしまう時間帯があるが、それはまだヴァレリーサッカーの熟成が足りないからだろう。この1ヶ月のブレイク中に練習を重ねて、リーグ再開後には更にパワーアップした「アタカバチ」を見せて欲しいものだ。