2001年6月15日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜これはピンチか、あるいはチャンスか

レポート/瀬戸秀紀

 5月は負けなしの4連勝。それもすべての試合で3得点で、いよいよヴァレリー監督の攻撃サッカー全開か、と言うサンフレッチェ。中断中のコンフェデレーションズカップでも上村、久保のみならずコリカ、ポポヴィッチがオーストラリア代表として活躍し、このまま勢いに乗って連勝を続ける、と行きたいところだが、しかし残念ながらそうは行かないのが辛いところだ。

 オーストラリア代表は、月末にワールドカップのオセアニア地区2次予選を戦うことになっている。その合宿が始まるのは6月16日から、と言うことで、コリカとポポヴィッチは神戸戦、G大阪戦に出場することはできない。更にワールドユースのメンバー入りしている森崎兄弟と駒野はアルゼンチン遠征中。と言うことでこのリーグ戦の2試合はレギュラー・準レギュラークラス5人を欠いて戦わなければならない、と言うある意味緊急事態なのである。

 このメンバー不在を補うテストケースとなったのが、5月26日のプレシーズンマッチ福岡戦と、水曜日のナビスコ杯FC東京戦だった。この2試合でトップ下に入ったのは2年目の山形恭平。2年前の高校選手権決勝で、ハットトリックを決めて東福岡の優勝に貢献したあの選手だ。大きく期待されてプロ入りした山形だったが、しかしここまでリーグではベンチ入りが1試合あっただけで公式戦の出場は無し。サテライトでこそ結果を残しているものの、いきなりトップで起用して大丈夫か、とヴァレリー監督も相当悩んでいたそうだ。

 しかし、彼はやはりただ者ではなかった。この2試合とも前半はコンビネーションが合わずに消えている時間が長かったが、ゲームが進むにつれて本領を発揮。鋭いドリブルやスルーパス、そしてゴール前に飛び出すプレーで得点に絡む事ができたのだ。福岡戦では決勝点となるゴールを決めて、プロ入り初のヒーローインタビューを受けるというおまけ付き。コリカ、森崎兄弟など本来トップ下に入る選手のいない間に、ポジションを取ってしまいそうな勢いだ、と言ったら言いすぎだろうか。

 レギュラー選手がいない、と言うのはチームにとっては大きなピンチだ。だが、それは出場機会のなかった選手にとっては大きなチャンスでもある。実際これまでヴァレリー監督は、主力の欠場で空いたポジションを若手選手に与え、それぞれ貴重な経験を積ませることに成功している。本当に強いチームとは、メンバーが変わっても質が落ちないチームである。主力メンバーがいないというピンチは、チームの層を厚くして、本当に強いチームを作っていく上での大きなチャンスなのである。

 次の相手の神戸は、このところ苦手としている相手だ。昨年のセカンドステージこそ勝っているもののそれまで4連敗。また昨年の天皇杯でも敗れている。この「苦手意識」を克服するために、ここは全力で勝ちに行きたいところである。予想されるメンバーは次の通り。

 GK:下田

 DF:沢田、トゥーリオ、上村、服部

 MF:森保、桑原、山形

 FW:藤本、久保、高橋

山形がリーグ戦でも通用するか、そしてナビスコ杯でハットトリックを決めた久保の爆発があるか、に注目したい。