2001年7月6日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜ポポヴィッチの穴

レポート/瀬戸秀紀

 豪州代表とU-20代表不在の2試合を2連敗で終えたサンフレッチェ。山形や藤本、更には奥野や桑原まで起用するなど苦心惨憺だったトップ下のポジションには、コリカ、森崎和が戻ってくる。しかし、残念ながら最も肝心な選手はもう戻ってこない。それは、来日以来4年半に渡って守備の中心として活躍してきたポポヴィッチだ。

 トムソン前監督の誘いを受けてセミプロの豪州リーグから移籍してきたポポヴィッチは、プロとしてのキャリアを日本でスタートさせたことになる。初年度こそ怪我のため出場機会が少なかったが、その後は大きく成長。コンフェデレーションズ杯で豪州代表の中心として3位に大きく貢献したのは、良く知られているところだ。この活躍で良いオファーがいくつか来たそうで、これは今年28歳の彼にとってはたぶん最後の欧州移籍のチャンス。彼のファンの1人としては、この機会を是非生かしてほしいと思うのは確かだ。だが、サンフレッチェとしては非常に痛い退団なのも、また事実なのである。

 ポポヴィッチはこれまで、身長を生かしたヘッドの強さと読みの鋭さで「堅守広島」を支えて来たのだが、しかしそれだけではない。機を見た攻め上がりやセットプレー、そしてPKのキッカーとしても活躍して、在籍期間中の得点はリーグ戦だけで13点。1st stageの12試合中彼がフル出場できた6試合は5勝1敗だったのに対し、怪我、あるいは代表招集で欠場または途中退場だった6試合は、全て敗れている。ポポヴィッチの退団はただ助っ人の1人がいなくなった、と言うだけではない。重要な中心選手の1人を失った、と言っても過言ではないのだ。

 このポポヴィッチの穴を埋める、と言ってもそう簡単ではないだろう。クラブは現在新外国人獲得に向けて動いているらしいが、まだ決定していない以上合流は早くて2nd stage開幕から。上村も怪我で7月中は出場できない状況で、守備の組織が固まっていないヴァレリー・サンフレッチェにとっては最大のピンチ、と言っても良いだろう。そんな中、今週末にはまだ優勝の可能性を残す清水とアウェイでの対戦となる。はっきり言って、非常に難しいゲームにならざるを得ないだろう。

 ではこの清水戦は、どうやって戦えばよいのだろう。98年のアウェイでの清水戦、徹底して守りに入って当時のアルディレス監督から「あれでは広島の選手がかわいそう」と揶揄されたが、今回もそう言う戦術を取るかと言えばそうはなるまい。何と言っても「アタカバチ」のヴァレリー監督だ。不安定な守備には目をつぶって、1点取られたら2点、3点取られたら4点を狙うような、そんなサッカーを目指すに違いない。今のところ考えられるメンバーは次のような感じか。

 GK:下田

 DF:沢田、奥野、トゥーリオ、服部

 MF:桑原、森崎和、コリカ

 FW:藤本、久保、大木

この中では、チェコ戦で先制ゴールを決めた森崎和に注目したい。彼がアルゼンチンでどれだけ成長したか、どれだけ成長できたかが、今後のサンフレッチェと、そして日本サッカーにとっても大事なのではないだろうか。