2001年10月12日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜もう一人の森崎

レポート/瀬戸秀紀

 昨年のJリーグ新人王は、サンフレッチェの森崎和幸。高いキープ力と視野が広く正確なパス出しで、24試合出場の3得点と活躍。高卒新人としては、99年の小野伸二に続く快挙だった。今年もU-20代表の主力として、アルゼンチンで活躍したのは記憶に新しい。

 この和幸は、新人王を取った会見で「来年は弟がとります」と予言した。弟、とは森崎浩司。兄とは生まれた日だけでなく身長、体重とも同じで、地元の中学からサンフレッチェユースに進み、U-20代表としてアルゼンチンで戦ったのも一緒だ。違うのはその利き足と、ポジションがやや前だという点だけだろう。

 だが、プロ入りしてからの軌跡は明暗を分けた。昨年の出場はわずかに4試合。どのゲームでもこれと言った印象を残すことは無かった。天皇杯ではベンチ入りしたにも関わらず、アップ中に右足甲を疲労骨折。更にこの怪我からようやく復帰した今春のキャンプでも、これからというときに怪我をする。シーズンに入ってからも、なかなか結果が出せず、今年のリーグ戦出場はこれまでわずか1試合にとどまっていたのである。

 その技術の高さで、サテライトでは格の違いさえ見せる浩司。なぜ再びチャンスを与えられないのか、チームに近い人ほど疑問に思っていた彼がようやく出場機会をつかんだのが、先々週の福岡戦だった。後半17分、この日2点目のゴールを挙げた日本代表・藤本と交代でボランチの位置に入る。リードはまだ2点だったということもあって、「守備を固めれば良いというものでもないのに」と疑問を投げ掛けるテレビの解説者。

 だがその予想は、わずか1分後に見事に裏切られるのである。久保のパスを受けた浩司はトラップ一発であっさりと相手DFをかわすとゴール前に抜け出し、左足を一閃!そのボールは強烈な弾道でファーサイドのネットに突き刺さった。「得意なプレーはシュート」と言うこのやんちゃな弟が、ついにその能力を開示した瞬間だった。

 続いてこの「将来、必ずスターになる素材」(ヴァレリー監督)は、終了間際にも見事なプレーを披露する。ゴール前で得たFKをまたもや左足でゴールに叩き込み、兄が今年19試合出場してゲットしたゴール数をわずか25分間で抜き去ってしまったのである。博多の森に詰めかけた大多数の福岡サポーターには思い出したくもない場面だったろうが、広島のサポーターにとっては待ちに待った、まさに「スター誕生」と言うべきシーンだった。

 が、好事魔多し。ようやくブレイクしたこの弟を待っていたのは、またもや悲劇だった。一昨日の練習中、今度は左足の甲を骨折してしまったのだ。全治3ヶ月。選手生命に関わるようなものではないとはいえ、ようやく結果を出した彼にとっては痛い痛い怪我だ。そして彼のホームでの活躍を待ち望んでいたサポーターにとっても。彼が一日も早く回復してくれること、2度の大怪我から復帰して日本代表にまでなった上村のように更にパワーアップして元気な姿を見せてくれることを、願わずにはいられない。