2001年12月14日(金)


サンフレッチェ広島サポーター通信〜勝利は2人のために

レポート/瀬戸秀紀

 リーグ戦が終了し、来季の契約交渉が進行中でチームを離れる事が決まった選手もいるこの時期。天皇杯に臨む選手はモティベーションが上がらない、と言われることも多い。実際に先週行われた3回戦では、J1の6チームが敗退の憂き目に遭った。だがサンフレッチェは、来季からJ1に昇格する仙台に対して1−0の勝利。最小得点差のゲームだったとはいえ、シュート数18−2と言う数字に見られるように内容的には完勝と言って良いものだった。

 今のサンフレッチェには、天皇杯に勝ちたい、と言うモティベーションの源が二つある。一つはヴァレリー前監督、もう一人は森保一選手。どちらもサンフレッチェに多くのものをもたらして、今季限りでチームを去ることになった人物だ。

 ヴァレリー氏はチーム戦術と選手の意識に大きな変革をもたらし、攻撃的で面白いサッカーを作ってくれた。セカンドステージの成績は、8勝7敗とは言え久々の3位。優勝した94年ファースト・ステージ以来の好成績だった。このまま行けば、きっと来年はもっと良いサッカーを見せてくれる。そして良い成績を残してくれる。そんな期待が高まる終わり方だった。だが、残念ながら夫人の病気のためやむなく退任して12月上旬に帰国。春先に種を蒔き、ようやく芽吹いたヴァレリーサッカーは未完成のままに終わってしまった。そのヴァレリー氏の残したものの大きさを示すには、この天皇杯で優勝という結果を残すことが一番なのだ。

 森保選手は、サンフレッチェの前身のマツダ時代から広島を支えてきた選手だ。途中で1年間京都にレンタルされていたものの、ベテラン選手の中ではもっとも長い広島でのプレー歴を持つ、サンフレッチェの「魂」だ。特に技術が優れているわけでもないし、フィジカルが強いわけでもない。だが、そのゲームの流れを読む力と他の選手を動かす力は年を経るにつれてますます磨きがかかり、練習から常に全力で取り組む姿は若手選手にとっての良いお手本となっていた。そしてその彼は、サポーターから最も愛される選手でもあった。先週の仙台戦では試合後にサポーターが手作りのセレモニーを行い、彼との別れを惜しんだ。その中で森保選手は、次のように語っている。

「とにかく、この天皇杯で勝ちたい。そして、みんなで、このチームで国立に行きたい。そう、みんなで誓いあっています。そのために、一人のプロ選手として、自分に与えられた時間を精一杯使って、準備したい。まだまだやれる、そう思いながらやってます。」

 全ての選手達にとって、勝利はまず自分たちのためだ。そしてそれを応援するサポーターのためのものだ。だが今年に限っては、特にこの2人のためのものだ、と言っても良いのではないだろうか。ロシアで夫人を看病しながら良いニュースを待っている、ヴァレリー氏のために。これがサンフレッチェでの最後のプレーとなる、森保選手のために。全ての選手、スタッフ、サポーターの力で、Jリーグ開幕以来3度挑戦して叶えられなかった元日の国立での勝利を!