2/16〜2/22のSANFRECCE Diary


<03.2.22> サンフレッチェの3代目の監督として97年から2000年までの4年間を率いたエディ・トムソン氏が昨日、悪性リンパ腫のためシドニー市内で亡くなりました。享年55歳。サッカーを愛し、広島を愛した熱血漢のあまりにも早すぎる死でした。
 スコットランド生まれのトムソン氏はオーストラリア代表監督を長く務め、92年のバルセロナ五輪でベスト4に進むなど、若手育成とチーム作りの手腕に定評のある指導者でした。94年にはキリン杯で来日して広島で日本代表と対戦。これが広島との縁となり、97年にサンフレッチェの監督に就任してバラバラになってしまったチームを立て直しました。
 そのサッカーの指向性は、徹底してリアリズムを追求したもの。就任当初は「マイボールを大切にするサッカーがしたい」と語ってモダンなサッカーを目指していましたが、当時のチーム状態を考えてすっぱりと方向転換。ラインを低く引いて守備を固め、セットプレーとカウンターを磨いて強豪チームからも勝ち点を奪い取る、と言うサッカーで、実力以上の結果を収めていました。
 また、チーム内では自分がボスであると言う思想を徹底。主将を置かず、代表クラスの選手や「子飼い」のオーストラリア人選手をも重用することなく、強力な「トムソンファミリー」を作り上げました。特に97年末の経営危機を端に発した一連の騒動では、複数の主力選手を「チーム作りの害になる」として放出を要請したのはトムソン氏自身だったとのこと。そこで得た移籍金で新しい選手を獲得すると言う要望は叶わなかったものの、その後宮沢や山口、沢田ら他チームを「リストラ」された選手や久保、服部、藤本ら実績の少なかった若手を育てて、98年の「J1参入決定戦」行きの回避や99年の天皇杯準優勝などの実績を残しました。
 更に、現在の若くて能力の高い選手達のチームの基盤を作ったのもトムソン監督。森崎兄弟や駒野がユースにいた時代から目をかけて育て、準備ができたと見るや当時高校生だった森崎和を起用し、翌年新人王を取らせたのは彼でした。2000年には攻撃型のチームを作ろうとして思うように行かず、「カズや浩司、駒野、松下、山形、八田、中山。彼らを育てて、強いチームをつくりたい」と言う思いを残しながら退任することになりましたが、「チームを去っても、トムソン監督の思いは、サンフレッチェに」(広島フットボール)ありました。退任後も今西氏や上野氏に頻繁に電話するなどチームの状況を心配し、昨年には病魔に襲われながらもチームのJ2降格危機に際して激励のファックスを送って来ていたのだそうです。
 時には怒鳴り散らし、ベンチを蹴り上げ、相手監督と乱闘寸前になり、審判につかみかからんばかりの態度を取って3度(記憶によると)もレッドカードを受けたトムソン監督。それは熱血漢であった彼なりのサッカーの愛し方であり、広島の愛し方であり、そして選手達への愛情の表現でした。歴史に「if」はないのですが、もしトムソン氏が昨年から指揮を執っていたとしたら。J2降格という結果はきっと有り得なかったでしょうし、また若手選手を中心に結束力の高いチームを作り上げていたに違いないでしょう。彼の生きているうちにJ1復帰、そして優勝と言う結果を見せる事ができなかったのは、本当に残念で仕方がありません。私はここに心からの哀惜の情を込めて、ご冥福をお祈りしたいと思います。
<03.2.20> 昨日サンフレッチェはガンバ大阪のキャンプ地まで遠征して練習試合を2試合行い、4-1、0-2の1勝1敗の結果でした。
 まず1試合目はトップ同士。今シーズン初めてベストメンバーを組んだサンフは、次のような布陣だったそうです。
      下田

駒野 リカルド 上村  服部
(→沢田74分)
  サンパイオ 森崎和(→松下74分)
  (→桑原45分)
      森崎浩
 高橋(→梅田63分) 大木(→李60分)
     エルツェグ(→松浦45分)
 対するガンバは、GK:松代、DF:木場、宮本、山口、MF:ガレアーノ、遠藤、アルセ、二川、新井場、FW:マグロン、大黒。ガンバは吉原らが体調不良でリタイア中でしたが、それを除けばほぼベストメンバーだった模様です。昨年年間通算3位だったガンバには今年は優勝候補の噂もありますが、広島フットボールによると「どちらが『J1の優勝候補』なのか、わからない」ような内容だったそうです。サンフはラインを高く上げて前線から積極的に守備に絡み、中盤では少ないタッチのパスをつないで相手を翻弄するサッカーでガンバを圧倒。特にサンパイオ、森崎和のドイスボランチは安定感があり、リカルド、上村の最終ラインも安心して見ていられる出来で「サンフレッチェの組織的な守備が、ガンバの強力攻撃陣を粉砕した感があった」ようです。更に攻撃陣も久保や藤本が欠けた穴を感じさせない内容で、1点目は早くも前半4分。左サイドからのクロスにエルツェグが競り合って落としたボールを、大木が左足のボレーで叩き込みました。12分に最終ラインで上村が足を滑らせて同点に追いつかれましたが、その後のチャンスは圧倒的にサンフが多かったとのこと。エルツェグのシュート、駒野の突破とミドルシュート、森崎和のミドルシュートに高橋が突っ込んだシーンなど何度もガンバゴールを脅かし、前半は1-1ながら見ていて非常に楽しいゲームだったようです。
 後半に入ってサンパイオ、エルツェグに代わって桑原、松浦を入れたサンフは、ゴールラッシュを見せます。まずは後半3分、上村のロングパスを受けた高橋がトラップ一発でDFを抜いてドリブルからゴールを奪い、18分には森崎和のパスを受けた松浦がスピードで相手を置き去りにして角度のないところからシュートを決めます。更にその一分後には森崎和のクロスを高橋がヘディングシュート。これはバーに阻まれますが、それを森崎浩が押し込んで19分間で4-1と突き放しました。そしてその後も松浦のスピードや森崎兄弟のパス、服部の突破などでチャンスを量産したそうで、松代の好セーブがなかったら何点取れたか分からないようなゲーム内容だったとのことです。
 続いて行われたサテライト同士のゲームの、広島のメンバーは次の通り。
      尾崎

西嶋  高柳  八田  沢田(→須田50分)

    李    松下
      高木
 西村(→田中68分) 山形(→高萩75分)
     トーレス(→木村45分)
 こちらは実好、森岡、中山、井川、嵜本ら経験豊富なメンバーを揃えたガンバに圧倒され、前半37分に嵜本、後半8分に森岡のゴールを許し敗れました。ただ、後半には闘志をむき出しにしてゴールを奪いに行くと言う姿勢は見せたそうで、「この闘志を見失わなければ、彼らは絶対に成長する。そんな予感もにおわせたゲームだった」(広島フットボール)そうです。ガンバはこのところ試合をしていなかったのに対して、サンフのサテライトメンバーは昨日に続いての連戦。そんな体力的に厳しい時のゲームとして必要な精神力は見せていたわけですから、この結果は悲観するほどの事は無いように思います。
 小野監督によると「この試合は、もっと課題が出てくるか、と思っていたんですが、いいところばかりになってしまいましたね」と笑顔が浮かぶような出来だったようです。2/2から始まったキャンプはまだ中盤。フィジカルとメンタルを鍛え、ようやく戦術練習が始まったところでチームとしてはまだまだ完成からは程遠いはずのこの時期ですから、そういう時に良いサッカーを見せたことは嬉しい誤算、と言えるものだったかもしれません。しかし、そう言う良いサッカーは既に天皇杯から見せていたわけですから、そこにサンパイオ、リカルドと言う質の高い選手が加わったサンフがレベルアップしていたとしても、ある意味当然と言えるかも。むしろサンフの昨年からの課題は、主力メンバーが欠けたとき、あるいは調子を落としたときに、チーム全体のパフォーマンスが一気に落ちてしまうことです。特に今年は休み無しに8か月間のリーグ戦を戦わなければなりません。五輪予選などで主力を抜かれる事も多いでしょう。そんな中でチーム力を落とさずに戦うには、誰が入っても同じようなサッカーができるような組織力を磨くこと、そして控えメンバーがレベルアップすることです。シーズン開幕まで残り3週間余り。そこでどれだけチーム全体の力をアップさせる事ができるかどうかが、(敢えて言えば)小野サンフレッチェの課題だ、と言えそうです。
<03.2.19> 昨日サンフレッチェは今季初の対外試合をセレッソ大阪と行い、トーレスのゴールで1-0で勝ちました。
 サテライト同士の対戦となったこのゲームに、サンフは新人やユースなど多くの若手を起用して次のようなメンバーだったそうです。
     【前半】              【後半】

       林                 林

西嶋  松下  八田  佐田    西嶋  八田  高柳  高木

   須田    高木          松下    高萩

      木村                山形
 西村        山形      田中        松浦
      松浦               トーレス
 戦術練習をほとんどしていない事、プロで初めてプレーする新人やユースの選手が多く含まれていたことなど理由は色々あったとは言え、内容的にはかなり物足りない試合だったようです。特に前半は立ち上がりからボールも支配されて、何度もピンチを迎えたとのこと。DFライン、中盤とも不安定でなかなか自分たちの形を作れず、ロングパスから松浦のスピードを生かす戦術を取らざるを得なかったようです。前半のシュートはその松浦の一本のみで、見どころの少ない前半だったようです。
 ハーフタイムにこの日の指揮を執った牧内コーチの指示を受け、メンバーを入れ替えたサンフは攻守に安定し、特にユースの高萩が中盤に入ったことで落ち着きを取り戻します。この日唯一の得点は高萩のスルーパスからで、松浦がDFラインの裏に抜け出し中央にパス。これをトーレスが冷静にゴールネットに突き刺しました。そしてその後のセレッソの反撃を組織的守備と林の好セーブで防ぎ、今季初の勝利を収めました。しかし勝ったとは言え課題は山積みだったそうで、小野監督が狙いとして挙げていた「問題点の抽出」はできた模様。また個々の選手に関しても「ポジションを取る」という迫力こそ無かったものの戦う姿勢は見せたとの事で、首脳陣も一定の評価を与えていたそうです。
<03.2.19> 日本サッカー協会は昨日、2/24〜27に宮崎で行われる合宿に招集するU-22代表候補26人を発表し、サンフからは森崎兄弟、駒野、林の4人が選ばれました。
【GK】上野(京都)、岩丸(神戸)、林(広島)
【DF】宮本(G大阪)、池田(清水)、三田(新潟)、茂庭(FC東京)、北本(神戸)、青木(鹿島)、中澤(柏)
【MF】明神(柏)、森崎和、森崎浩、駒野(広島)、松井(京都)、石川(FC東京)、杉本(C大阪)
    鈴木(浦和)、阿部(市原)
【FW】原(名古屋)、前田、西野(磐田)、中山(G大阪)、大久保(C大阪)、田中(浦和)
 今回選ばれた選手の内訳ですが、アジア大会以前から選出されていたメンバーがやはり主力を占めています。これにカタール遠征に参加した中から、林、杉本、原、西野の4人を抜擢。更にオーバーエイジから宮本、明神を招集しています。山本監督の意図としては、ブルキナファソへの遠征中のU-20組を除いたベストメンバーという感じなのではないかと思われます。
 この合宿の期間にU-22代表候補は京都、仙台と練習試合を行う予定ですが、サンフとしてはキャンプの仕上げの時期に選手を4人も抜かれるのは正直言って痛い、と思います。しかしこれらの選手は、いずれも今年は五輪予選で抜けることが予想される選手。その対策を立てておかなければ昨年の二の舞になるのは間違いないわけですから、むしろ彼らがいない中での準備を進めておける、と考えればちょうど良い機会かもしれません。この間にサンフは大宮や仙台と練習試合を行いますが、そこでぜひともそれ以外の選手達に、U-22代表候補組の不在を感じさせないような活躍を見せて欲しいものです。
<03.2.18> 昨日配信の広島フットボールによると、宮崎キャンプの第二日は戦術練習が中心。1対1やパス回し等の練習や7対7の戦術トレーニング、中盤をワンタッチパスに制限した11対11の10分ゲームなど、様々なパターンで「『全員守備』のコンセプトを徹底させ、どうやってボールを奪い、そこから速い攻撃につなげるか、をメインテーマとして練習を組み立てていた」そうです。その中では小野監督の激しい叱咤の声が印象的だったそうで、このキャンプに賭ける思いの強さが伝わってきたとのことです。
 今日のキャンプ3日目は、いよいよ他チームとの練習試合が入ります。まずはセレッソ大阪が相手で、昨日のCチーム(GK:尾崎、DF:須田、高柳、西嶋、佐田、MF:高萩、李、西村、FW:梅田、木村、トーレス)が中心になりそう。数少ない(かも知れない)チャンスを生かして、精一杯のアピールをして欲しいものです。
<03.2.17> 昨日の夕方、二次キャンプの場である宮崎に到着したサンフレッチェの選手達は、休息の間もなくグラウンドに出てまずは1km×6本のランニング。更に筋肉トレーニングを行うなど約1時間20分のメニューをこなしたそうです。移動、試合、移動、練習の繰り返しが予想される今季の厳しい日程を考えて、これもメンタルとフィジカルのトレーニングの一環だったのかもしれません。小野監督によると先週の広島での3日間と宮崎の前半の3日間を「一つのステップと考えて」いたとのこと。(広島フットボールによる。)明日のセレッソ戦は若手中心で戦い、明後日のガンバ相手の2試合を含めてほぼ全選手が起用される事になりそうで、ここから激しいポジション争いが始まりそうです。
<03.2.16> 先週発売の「紫熊倶楽部」3月号(Vol.61)の表紙を飾るのはサンパイオで、「ようこそ、世界のスーパースター」との大きなタイトルが躍っています。2ページ目からは「広島に、来たかった。セザール・サンパイオインタビュー」が掲載されています。若きセレソンとして来日し、フリューゲルスの一員として活躍したサンパイオ。チームを愛し、サポーターから愛されながらもフリューゲルスの消滅と言う衝撃に見舞われました。しかしその過程で日本人の暖かさなど「いろいろな発見をした」のだそうです。家族の事を考えてその後ブラジルに戻ることを選択したものの、日本に対して良い印象を持ったまま日本を離れました。そしてそれから4年。昨年サンパイオは、柏からのオファーを受けて再び来日します。選手としてのキャリアの終盤を、ぜひ愛する日本で過ごしたいと考えてのJリーグ復帰でしたが、しかし柏での一年は決して満足できるものではなかったようです。昨年末でレイソルを離れることになった後の広島からのオファー。「ずっと広島のことは、いい街だと思っていた...J2からJ1に昇格させる...難しい仕事に、僕はチャレンジしたいと思った」という思いから、このオファーを承諾します。そして淡路島キャンプからチームに溶け込み、サンフレッチェのために、若手選手達のお手本となって「知らず知らずのうちにチームを正しい方向に導いている」そうです。
 これに続く記事は、淡路島キャンプのレポート。「テーマは、メンタル」と題してバス移動から始まってアウトドアプログラムで終わったキャンプの詳細を報告しています。続いて、6人の新人選手、西村選手、山形選手、沢田選手に1ページずつ割り当てて、今年に向けての期待を語っています。コラムの1つめは巻頭の中野編集長の"This is Football"で、結局移籍を選択した元エース・久保選手について。早川文司さんは「広島サッカー史を歩こう」で、東洋工業と広島出身選手が日本サッカーを席巻した1965年前後を振り返っています。日刊スポーツの中上記者によるコラムは、淡路島キャンプを中心に新しくなったチームの雰囲気を伝えています。
 後ろのカラーページは「史上最大のチャンス」と題して、高橋選手のインタビュー。久保、藤本という「大駒」が抜けたポジションを巡って勃発するであろうアタッカーの争いに向けて、様々な思いを語っています。そして最後のページは、TSSアナウンサーの石井百恵さんによる「大好き!サンフレッチェ」。就任から二ヶ月が経過した小野監督の人柄を語っています。
 J2降格でファン離れも心配されましたが、むしろ逆に今こそサンフレッチェをサポートしようという気運が盛り上がっているのか、2月号は在庫がなくなるほどの売れ行きだったそうです。広島県内の大手書店やV-POINT、「ひろしまゆめてらす」等でも扱っていますが、確実に手に入れるためにはやはり定期購読を。お問い合わせ、お申し込みは紫熊倶楽部ホームページからどうぞ。
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